びよ小話 | ナノ

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校日和

勤労感謝の日

 現在の国立魔法学校大食堂は、午後二時という微妙な時間帯な上に休日ということもあって利用者も少なめ。
そんないつもより少し寂しい食堂の一角を、とある集団が陣取っていた。

「なんだか、今日はプリンくんとポトフくんを見ないわねぇ?」

赤い髪をセミロングにしている彼女は"リンゴ"。

「ホントホント。私たちの目の保養なのに〜」

オレンジ色の髪を二つに結んでいる彼女は"ミカン"。

「彼らなら、今は学校にはいなくてよ?」

黄色の長い髪を縦ロールにしている彼女は"レモン"。

「? どうして学校にいないの?」

桃色ショートヘアの彼女は"プラム"。

「本日は"勤労感謝の日"でございますでしょう? ですから、いつも出番で忙しい主役どもには消えていただきましたの」

プラムの問いに、レモンはおほほと優雅に笑いながら温泉旅行のパンフをみなに見せた。

(あ、ココアの家だ〜)

と、短め紫ウェーブの"ブドウ"が、レモンが主役四人にプレゼントした場所を見て思う。

「ってことは、今日は私たちが主役なのね!」

その隣で、赤紫色のポニーテールを揺らしながら顔を明るくした彼女は"ザクロ"。

「主役……なんでしょうけど、人数が多い気がします……」

「しかも本編とちゃうしな」

赤髪猫耳少年"サラダ"とキャラメルブラウンのソバカス少年"タマゴ"の言葉は聞かなかったことにして、

「そう! 今日はわたくしたちが主役なのですわ〜っ!!」

レモンは高らかにそう言った。
 ――こうして、学校日和の脇役の会が始まった。

「そもそも、何故わたくしが超脇役なのか、甚だ疑問ですわ!」

「分かる分かる! 私たちも、ポトフくんはまぁしょうがないけど、チロル=チョコとかアロエ=ヨーグルトとかよりも先に登場した筈なのに!」

手始めに、レモンとリンゴが自分の出番のなさを嘆く。

「「それなのに、学校日和の序盤だけ、2に至っては登場すらしてないなんてっ!!」」

だって出すところないんだもん。

「何言ってるの〜? レモンちゃんたち、ちゃんと登場してたよ〜?」

「「え?」」

嘆くレモンたちに、ブドウはふわふわ笑いながら学校日和2の第三十話を持ち出した。



『ポトフ=フラント!』

「「きゃああああ!!」」←これ



『プリン=アラモード!』

「「きゃああああ!!」」←これ



「ね?」

そして、彼女たちの登場していた、学園祭でのプリンとポトフの登壇シーンの歓声の部分を指差した。

「「・・・」」

念の為に言っておくが、ブドウに悪意はない。

「はあ……私たちってなんでこんなにぞんざいな扱いなのかしら?」

 頭を抱えながら言うは、ココアと髪色が被っているプラム。

「わたくしなんて、髪型どころか眼鏡をコンタクトに変えたのにノータッチですわよ?」

がっくりとうなだれるは、口調がムースと被っているレモン。

「えっと、……そうだわ! 私たちに何か特徴があればいいんじゃないかしら!」

と提案したのは、これといって特徴のないミカン。

「「特徴……?」」

「そうね……あっ、特徴的な口調にしてみるとか!」

プラムとレモンの聞き返しに、ザクロがそう提案すると、

「無駄や。ワイ、御国言葉丸出しなのに脇役なんやで?」

「……ちなみに"にゃー"とか言ってる僕も右に同じですよ」

タマゴとサラダがブラックなオーラを纏い始めた。

「う〜んとね〜……あ、ミントくんたちとお友達になればいいんじゃないかな〜?」

「! そうね! ブドウもココアと友達だからちょこちょこ出てるし、ついでにプリンくんとポトフくんにお近付き出来るし!」

ブドウの提案に、リンゴが手を合わせて賛成すると、

「それも無駄やで」

「ぼくたち、一応ミントくんとポトフさんのお友達ですもんね……」

タマゴとサラダのブラックなオーラが濃くなった。

「で、では、いっそのこと彼らを始末してしまうというのは?」

レモンが何やら物騒な考えを口にすると、

「何言うとんねん」

「相手は揃いも揃ってこの学校で最強なんですよ?」

ブラックなオーラが、範囲と濃度を増した。

「……」

「……」

「「……」」

ブラックなオーラが、彼らを包み込んだ。

「……帰ろか」

「はい……」

「「そう……ね……?」」

「宿題やらなきゃ〜」

 ――風も少なく穏やかに晴れた日の、静かな午後のことであった。


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