「もっとずっと仲良くなりたい? そうねぇ、美味しいものを食べに行くとかすれば良いんじゃない?」
という麗のアドバイスのもと、死神は、もっとずっと仲良くなりたいお相手を呼び出した。
――"駅前のビルの三階エレベーター前の店に明朝10時にかもん"。
「……。……、……おい、アホ神」
「なんだゆうこりん」
「これは何のつもりだ」
呼び出された悠は、非常に引きつった顔で現状の説明を死神に求めた。
すると、彼は得意気にフフンと笑った後、
「スイーツバイキングだ」
大量にスイーツを乗せたお盆を両手に、瞳をキリリと輝かせながらそう言った。
「嫌がらせか! と言うか明らかに男が来るところじゃないだろ!?」
確実に浮いているだろうと反論する悠。
「フッフッフッ。価格の割にどれも申し分ないが、特にここのタルトとチーズケーキは美味いんだ」
反論をものともせずに語る死神。
「そんなことは聞いてな――……って、お前まさか常連かっ!?」
「週3」
「常連か!!」
一応周りのお客さんを考慮してマナーモードでツッコミを入れた悠。
アンチ甘党な彼にしてみれば理解不能な超絶甘党野郎の食生活。
甘いのだらけのこの店なんて、何がどうなっても絶対に入らない。
「わあ!」
――はずだったのに。
悠の目の前に、フォークに刺さった一切れのケーキが差し出された。
「悠、これすっごく美味しいよ?」
差し出したのは、この店のケーキに魅せられたらしい葵。
またの名を、意図せずに彼を店に引きずり込んだ主な原因。
その彼が、ケーキの美味しさの感動を共有するべく、一口食べてみてオーラを放ちまくっている。
――女子かっ!!
葵に対してそんなツッコミを入れられるわけもなく、かつ、無下に断れるわけにもいかず。
おそるおそる腹を括って有り難く頂戴することにした悠であった。
「ね!」
ね! じゃねぇ状況であることは、当事者の味覚センスだけが知っていた。
――水飲みてぇ……!!
「葵、葵! オレ様もっ!」
「ふふふ。はい、あーん」
*
「……野郎三人でよくこのお店に入れた、ですね」
「何あの傍から見たら男二人を手玉にとっている小悪魔むすめ……!」
その様子を遠めに見て、他人のふりをする鈴と、なんだか楽しそうな麗であった。