#ノボリとトウコ





こちらのクダリさんの続き。

昨日シングルトレインのノボリさんにバトルで勝って、機嫌のいい私は次のダブルトレインへと向かうべく、軽い足取りでギアステーション前へと来た。

するとまた昨日と同じように先に扉が開き、中からはやっぱり客でもなく緑の服の駅員でもなく、でも昨日と同じでもなく今度は黒い服の車掌さんが出てきた。
あ、トウコ様、今日もまたいらしたのですね。
というのを聞くと、これもばったり偶然だったらしい。

それにしてもトウコ様、昨日の貴方のバトルは素晴らしいものでした。なんていつもののように笑いもせずに言うもんだから。ノボリさんは手加減してくれたんですよね。と皮肉たっぷりに鼻で笑って返事した。
トウコ様、もしも私達のバトルがお気に触ったのならばお許しください。しかしあれはけして手を抜いていたのではございません。お客様の力量にあった最高のバトルを提供するためでございます。普通のシングルトレインを制覇する実力のあるお客様にはスーパーシングルをお勧めしています。




本気の私達とバトルしたければぜひそちらへお越しくださいまし。そうして目の前の黒くて背の高い人は私に申し訳なさそうに頭を下げた。
あぁ、そんな顔しないで下さいノボリさん。スーパートレインの存在を知っていて、それを踏まえた上でやっと貴方に勝てた私です。なのに少し悪ふざけをした私に謝らないでください。
私は一言言葉を添えて頭を上げてもらった。


ところでどうしてこんなところにいるんですか。シングルトレインは点検中?と聞けば、どうしてそれをトウコ様が?と少し驚いたように聞き返された。
昨日ダブルがそうだったじゃないですか。で、今日はシングルかなぁって。そう答えると、あぁ、なるほど。と短く返ってきた。


昨日クダリが貴方にケンホロウを貸していただいたと聞きまして、あまりにも楽しそうに話すものですから、普段休日でも地下に篭っている事の多い私もつい空の見える場所へと行きたくなりまして。昨日はクダリがお世話になりました。
それでこれ、クダリからなのですが渡し損ねたようで、もし今日もまたトウコ様がここにお見えになりましたら渡しておいてくれと頼まれました。昨日出かけている間にクダリなりに考えて選んできたものだそうですよ?

そう自身の帽子のツバを摘みながら手渡されたのは、少し洒落た小さな洋菓子の包み紙。

あぁ、なんか逆に悪いことしちゃったのかなぁ。特にたいしたことなんてしていないのに。
あの、ノボリさん、クダリさんにお礼を伝えておいて下さい。

そう包み紙をカバンにしまいながら告げると、あの、トウコ様、実は私も一つお願いがありまして。と返ってきて、私が顔をあげると逆にノボリさんは帽子を深く被りなおして目元を下げてしまった。
あ、トウコ、様。その、先ほども申し上げましたように、昨日クダリの話を聞いて私も羨ましくなってつい外へと出てきてしまいました。
あ、あのっ、もしよろしければ、そのっ…今日これからトウコ様のケンホロウを、私にも貸していただけませんでしょうか?

一瞬、え?みたいな顔をしたら、い、いえ、別に出来ればで全然よろしいんですよ!?と焦りまくるノボリさんを見ちゃって、つい意地悪したくなった私はどうなんだろうと思った。

わかりました。今日こそはこの子をダブルトレインでバトルに使おうと思ってたけどノボリさんに貸してあげます。
でもそのかわり一つ条件がありますげどいいですか?

私はちょいちょいっと耳を貸すように促して、彼に顔を近付けて一言。

私にクダリさんの弱点一つ、教えて下さい。


フゥッ…とわざと息を吹きかけるように囁けば、顔を真っ赤にして目を閉じて必死に耐えているノボリさんがいた。


ト、トトトトウコ様!いきなり何をいたすのですか!?、ほら、ノボリさん早く。私急いでるんだけど。…っ、分かりました。貴方にクダリの弱点を教えましょう。
たったこれだけなのに効果は的面。やっぱ昨日クダリさんにコレ教えてもらって正解だったかも。
私はクダリさんの(バトルの)弱いところを教えてくれるノボリさんを目を細めながら見つめていた。そしたらノボリさんに何を笑っているのですか!と怒られた。

トウコ様、本当はこれはルール違反にあたります。絶対に他言なさらないでください。大丈夫、わかってますって、ありがとうございました。
息を吹きかけられたほうの耳に両手をあてながら口止を要求する彼に、また同じことしてやろうかなぁなんて思ったけど、さすがにかわいそうだから辞めておいた。
ごめんね私のケンホロウ。また今日もバトルはお休み。今日はこの人を乗せてってあげて?
ノボリさんが己の顔を見て不思議そうな顔してるケンホロウに説明する。
私、昨日貴方の背中に乗せていただいた、クダリの双子の兄弟のノボリと申します。
今日は私が貴方にお世話にならせていただきます。どうぞよろしくお願いいたしまし。

そう一つ会釈をして背中にまたがると、なにかを納得したようなケンホロウと共に空へと飛び立った。

トウコ様がダブルトレインを終えるころまでには戻ってまいります。


そうだんだんと小さくなっていく言葉を残して、青へと消えていく一羽と一人を背に私はギアステーションの中へと足を進めた。


さっきと今日の帰りに渡された二つのお菓子のお礼をするために、明日はマルチトレインにでも挑もうと思う。





次は私からマスター達へに会いに行こう。








――――――――*
余談ですが、これを下校途中の電車に乗りながら書いていたら、途中でリアル出発進行ー!を聞いて思わず振り向いた。
都心から離れていく下り電車内でした。


もう二人ともかわいいなぁ。


2011/06/21 UP


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