真実は僕の背中を見ている | ナノ


昔から何事にも熱しやすく冷めやすいタイプだった。最初のうちは尋常じゃないくらいの情熱をそこに注げるのに、気付けばその熱はまるで初めからなにもなかったかのように呆気なく冷めていく。それは自分が好きになった人に対しても同様に気持ちが続くのはほんの短い間だけで、いつの間にか相手への恋心は跡形もなく消えてなくなってしまうのだ。
そうして相手への愛情が消えると当然のようにその関係は終わって、心にはぽっかりと穴が開く。そんなことをもう何度続けてきただろう。私はただ、何かに夢中になって、満たされたいだけなのに。愛する人と永遠の愛を誓って、幸せになりたいだけなのに。

全部全部、この性格が邪魔をして、私の幸せを奪い去ってゆくのだ。

「やったらその性格直せばええんとちゃいます?」
「簡単に言わないでよ」

そんなことを繰り返していたら、いつしか私は人を好きになることが怖くなっていた。好きになって結ばれたってどうせすぐに冷めちゃって終わって寂しくなるだけ。相手のこともきっと傷付けてしまう。私が誰かを好きになったって良いことなど何一つもないのだから、それならいっそ初めから人を好きになんかならなければいい。好きになっちゃいけないんだ。それにこれ以上、心の隙間を増やしたくもない。

「なあ先輩、俺と付き合うて」
「だからだめだってば」

なのにこの男は毎日のようにしつこく私に求愛してくる。同じ委員会の後輩、財前光。私が当番で図書室にいる日は必ずやって来て。昼休みも、はたまた彼が部活のない日は放課後も私のところに来ては他愛のない話をして、思い出したように告白をする。

「俺なら飽きひんと思いますよ?むしろ四六時中一緒に居りたいと思わしたりますわ」

冗談っぽく言葉を放つその唇が時々苦しげに強く噛み締められることも、私への想いを告げたあと一瞬だけ揺らぐ瞳も私は知っていた。それらが彼の心の内を表していることもわかっている。それでも、だからこそ。

「先輩が好きや。絶対幸せにしてみせたりますから、せやから、」
「だめだよ、」

私はもうこれ以上なにも感じたくないんだ。失うなら何もいらない。傷付きたくない。傷付けたくない。何より君を、どうしてもこの身勝手なループの中に巻き込みたくもないから。だからお願い、どうか私の前から、消えてくれないか。

「…先輩?」
「だめ、だめなの」

ああ、それなのにどうして。曖昧にしか突き放せないの。完全な拒絶の言葉を口にできないのは、どうして。どうして。





真実は僕の背中を見ている

それでもわたしはきみをすき様 提出

( 虫ケラ/うじこ )
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