甘美なる月 | ナノ


月がきれいですね。ふと思ったことをぽつりと呟いた。ただの独り言だったのだけど、隣にいた彼は首を傾げてこちらを向いた。切れ長の涼しげな目と目があって思わず笑みがこぼれる。ああ、発言を撤回しよう。やっぱり独り言なんかではない。
「今のはどう捉えていいんだ?」
「ふふ、お好きなように捉えていいよ」
笑いながら彼の肩にそっと頭を預けた。少しの間を置いて彼もまたふっと笑い私の頭に頬を寄せる。ゆったりとした夜の空気が私たちだけの世界を作っていく。
「そうだな、そうさせてもらうとしよう」
するりと頬を撫でた大きな掌。その手に誘われるように顔をあげると唇に感じる優しい感触。ひどくあまい感覚に身を任せるように私はそっと目を閉じた。
月がきれい。ふたりでみる月は確かにひどく美しく、それでいてやたらとあまったるいものであった。

あなたがいればすべてがうつくしい
0512

柳さんのらぶらぶは想像できない。
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