イスの背もたれにすべてを預けもたれかかるとはみ出した背中半分と頭がぐにゃりと後ろに曲がった。逆さまになった世界では色んな種類の消しゴムを並べそれを重い表情で見つめる金髪がいた。
「どーがじだのー」
「うわこわっ!」
「あ゙ぁー」
「ちょ白目怖いて!めっちゃホラー!」
声をかけるとこちらを見てびくりと怯えられた。オーバーな反応がかわいくて白目のままクスクス笑うと本気で怖がられた。頭に血が上ってきたから逆さまな世界から脱出。
「ビビらさんといてや」
「たまの刺激も必要だよ」
「そないな刺激はいらんっちゅー話や」
「ところで何をそんなに険しい顔してたの?」
そう聞くときょとん顔でなにが?と聞かれた。今すごく険しい顔してたんだよと伝えると本人にはそんなつもりはなかったらしく驚いていた。
「見間違いとちゃう?」
「例え逆さまであろうとわたしの目は見誤らない」
「なんじゃそら」
「でも消しゴムそんなに並べて見てるってことはなにか考えてたんでしょ?」
「まあ…大したことやないねんけど…」
笑わへん?と不安そうに聞いてくる忍足くんに静かにうなずいた。
「実はな…マンネリやねん…」
「え、彼女?」
「ち!ちゃうちゃう!彼女やのうて、これ」
そう言ってきれいな人差し指でころころと弄ばれているのは彼のコレクションである消しゴム。わたしが頭にはてなを浮かべると、忍足くんはちょっと恥ずかしそうに視線を斜め下に泳がせる。
「最近目新しいもんもないし…こいつらもええんやけど、そろそろ刺激がほしいっちゅーか」
「うーん、それは重大だ」
「わかってくれるん?」
「わかるよ、大切な心の一部を失う危機だ」
「ちょっとオーバーやけど」
「でも刺激がないとそのまま飽きちゃうかもでしょ」
「ま、まあ」
「対策を練るしかない」
一緒に考えよう!と意気込めばつられるように忍足くんはおう!と答えた。心の中でかわいいなあとこっそり思った。
「というわけで、色々お店をサーチしてみた」
「おお!」
翌日、独自のルートで調べたいくつかのお店が書かれたメモを彼に差し出した。
「なるほど…女子が行くような雑貨屋は知らんな」
メモを見つめ感心したようにうんうんとうなずく忍足くん。その目はきらきらしていて楽しそうだ。この表情を見れただけで徹夜した甲斐があったというもの。
「なにかいいの見つかればいいね」
「あー、そのことやねんけど」
「なに?」
「よかったら、その、一緒に行ってくれへん?」
「わたし…?」
「女子が行くようなとこに一人で行くんはさすがに恥ずかしい、し、自分と行ったらおもろそうや」
きらきらした目のまま上目がちにそう言う忍足くん。頬が少し色付いたように見えたのは、わたしの妄想だろうか。
「わたしでよければ、是非」
「よっしゃ!ほな明後日の放課後とかどや?」
かわいい忍足くんのお願いを断る理由もなく。そうしてわたしの筆箱には彼とおそろいの色んな消しゴムで満たされていくのだった。
その消しゴムがわたしたちの距離を消してゆくの
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謙也くんハッピーバースデー!