恋する指先 | ナノ


「なあ、なんでこないなもん塗るん?」
「かわいいから」

はけが通るたびわたしの爪は淡いピンクに変身していく。小指から親指へと、女の子になっていく。

「はい、次左な」
「ねぇねぇ白石」
「んー」
「なんで白石がこんなもん塗るの?」

右手がおわって次は左手を机の上に差し出す。また、右手と同じように小指から親指へ、丁寧にはけが通っていく。

「楽しいから」

白石の質問を真似したら、わたしの真似をして返事をされた。塗るのが楽しいの?んー。集中しているのか曖昧な言葉が返ってきた。

「よっし、できたで」

最後に親指を塗り終えて、わたしの両手はかわいいピンク色に生まれ変わった。

「上手だね」
「せやろ」

両手を上にかざしてまじまじと見る。どの指もムラがなくて、きれい。白石によって女の子になった爪はみんな嬉しそう。

「足も塗ったる」
「足はいい、くすぐったい」
「えー」
「そんなに塗るの楽しい?」

そう聞くと白石はわたしの右手をとって指の腹にキスをした。

「楽しい。俺がお前のこと変えてるみたいや」

愛しそうにわたしの手をみつめる白石。とたんに自分の指先が愛しく思えて、空いたほうの左手にキスをした。つんとした香りに胸が満たされた。



0309
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