「お疲れさま」
「…ああ」
公園に行くとジャングルジムの上にはすでに先客がいた。学校帰りにそのまま来たらしく制服にマフラーだけの格好は夜の冷えた空気の中ではとても寒そうだ。
「飲む?お茶だけど」
「用意がいいな」
「まあね、肉まんもあるよ」
私も上に登りコンビニで買ってきた二人分のお茶と肉まんを見せて笑った。日吉くんは呆れたような素振りを見せる。でも口元はちょっと微笑んで、律儀にお礼の言葉くれた。
「最近空きれいだね」
「そうだな、星がよく見える」
温かいお茶と肉まんを手に二人で他愛もない会話をぽつりぽつりとこぼす。あの日からよくここに集まって夜空を見上げるようになった。約束をしたわけじゃない。学校でも相変わらずしゃべらない。だけど気付けば私はテニス部の活動予定を把握してしまっていて、そして公園に行くときは必ず二人分の温かい飲み物を買っていた。
「今日はUFO来るかなー」
「さあな、でも何か起きそうな気がする」
「なにそれ予知能力?日吉くんが言うとほんとに当たりそうだね」
「うるさい、茶化すな」
笑いながら言ったら睨まれた。というか拗ねたのかな。ごめんねとこれまた笑い混じりに謝って再び空を見上げる。
その瞬間、星が綺麗な筋を残してきらりと流れた。
「え…!今の…!見た!?」
「あ、ああ…みえ、た」
思わず彼の腕を掴みぐわんぐわんと揺さぶった。彼も驚いているらしく揺さぶられていることにも構わず星が流れた方向を呆然と見つめていた。
「あ、願い事言ってない!」
「あの早さじゃ無理だろ」
「日吉くんとUFO見れますように日吉くんとUFO見れますように日吉くんとUFO見れますように!」
星がいた場所に向かって大声でそう叫んだ。最後の方はうるさい近所迷惑だと日吉くんに口を塞がれてしまったけど。
「バカ、時間帯を考えろ」
「だって」
「それに星はとっくに消えてるんだから意味ないだろ」
「大丈夫見えないだけでまだ落ちてはないはずだから」
落ちる前に言えばいいでしょ、と自分勝手に作ったルール。また呆れられるかと思った。でも日吉くんは意外にも「それなら叶うかもな」そう笑ってくれたから、すごくすごく嬉しくて私は大きくうなずいた。
願いを叶えてくれる神様お星さま、私の願いは届いたのでしょうか。ちなみにそのお願い、ほんとうはUFOを見ることより日吉くんとってとこの方が重要なんです。彼には到底そんなこと言えないけど。
お星さまにだけ教えてあげる
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