「…」
「…」
「…」
「…お、おい、なんかしゃべれや」
「なんかってなんですかご主人様」
「知るか!メイドなら気ぃ利かせぇや!」
「うるせーですよご主人様」
「…お前ご主人様つけたらええと思うとるやろ」
「イエス、マイロード!」
「やかましいわ!」
スパーンと軽快な音が静かな部屋に響いた。一氏渾身のツッコミを受けた頭がじんじんと痛みを訴えている。くそ、なんたる暴君。
誕生日会が終わって解散になるとみんなはそそくさとこの場を立ち去った。ぽつんと残された私と一氏はさっきからずっとこんな調子だ。せっかくだからとメイドらしく何かしてほしいこととか聞いても、なんやかんやと流されてるし。これじゃあこんな格好をした私の存在意義はどうなる。
「ちょっと、いい加減なんか命令しなさいよ!」
「お前その発言おかしいで」
「うっせ!さあ、願い事を一つ言いたまえ!」
「いやせめて三つやろ普通」
「生憎と私はランプの精じゃないからな!メイドだからな!」
「…お前のその思考回路がどうなっとんのかわからへんわ…」
「まあまあ、で?どうする?小春ちゃん呼ぶ?」
「なんでここで小春やねん」
「だって小春ちゃんラブだろアンタ…いやご主人様」
「…あーもうお前と会話すんのほんま疲れる…」
ぼふ、と一氏の頭が私の太ももに落下した。突然のことにわたわたと慌てる私にぺちっとやつがももを叩く。
「ちょ…、」
「おー、無駄な脂肪も枕としては大活躍やな」
「てめ…ぶっ殺しますよご主人様」
ぼよんぼよんと人のももに頭を弾ませてあろうことか鼻で笑いやがった。仕返しにバンダナを思い切り引っ張って離すとベチッと乾いた音が鳴り、一氏の動きはしーんと静まった。こちらに背を向けて寝ているせいで表情は窺えない。
「一氏?」
「…ご主人様はもう疲れたわ。寝る」
「はあ!?勝手に寝んな!」
「王様の言うことはー?」
「ゼッターイ!っておい!」
けたけたと笑うも動く様子のない一氏。やはり表情は見えない。けど、まあいっか。そう諦めて一氏の頭をゆるりと撫でた。
「…おやすみなさいませご主人様ー」
「、おん」
命令しなさい
~0914
命令しなさいよ!ってセリフを使いたかっただけっていう