ひか誕 | ナノ


テニス部の先輩から聞いた話によると今日は財前の誕生日らしい。しかし財前を見るも特に浮かれた様子はない。むしろいつも通りの人を見下したようなその表情になんかウワァってなった。

多分財前あんな性格だから誕生日を祝ってくれるようなお友達がいないんだ。だからあんなぐっちゃぐちゃに捩れ返ったひねくれ者になったのだろう。そう思うとなんだか財前がひどく可哀想に思えてきて、ここはこの私が一肌脱いでやろうと決意した。


「というわけで哀れな財前くん、ハッピーバースデイツーユー?」
「お前に哀れまれた事でもうハッピーちゃうわ。アンハッピーもええとこや」
「まあそう強がんなっ!祝ってもらえて嬉しいくせに!」
「本当に気持ち悪いので視界から消えてくれませんか」
「ちょ、標準語やめてツライ」


せっかく人が慌ててクラッカーとかパーティー用のトンガリ帽子とか買ってきてやったというのに。財前はただただ人を小馬鹿にしたような目で私を見ている。なんか惨めだ。


「ちゅうか何やねんいきなり」
「テニス部の先輩から聞いた」
「ああ…あのアホらか…」
「いいじゃん先輩らなんか張り切ってたよ。可愛がられてるじゃないの〜このこの〜!」
「きもい。で、お前はなんなん」
「ああ、友達のいない財前くんのためにお祝いしてあげようかと思ってね」
「お前ホンマいっぺん殴らしてくれ」
「断る」
「ふん、これ見てみ」
「うわっ、な、なんだこの桃色めいたプレゼントの山は…!」
「靴箱と机んとこ置かれとった」
「財前くんへハートお誕生日おめでとうハート…だって」
「人気者は辛いわぁこれどないしょ一人やもって帰れへんわあ」
「なんだこの敗北感は」


財前は勝ち誇ったような顔をしていた。中身最悪だけど顔はいいからなコイツ。


「まあ、そういうこっちゃ。残念やったな」
「けっ、そうかいそうかい。じゃあ私はこれで失礼す…」
「ちょい待ち」


この性悪を祝ってやる気が失せた私は着けていたトンガリ帽子を財前に被せてそのまま立ち去ろうとした。だけどそれは財前に腕を捕まれたことによって止められる。


「なに、大丈夫その帽子あげるから」
「いらんわアホ。ちゅうか誕プレ」
「はい?」
「俺の誕生日祝うんちゃうんかい」
「そんだけあればいいだろ。欲張ってはいけないよ少年」
「用意しとらんのか。しょーもな」
「何故私は侮辱されているんだろう…」
「ほな誕プレのリクエストな」
「聞けよ。つか話進めんな!」
「とりあえず帰り俺ん家までこの荷物運んでもらおか」
「だから聞けええ」
「あと家にアホの先輩ら来はるらしいから部屋の掃除頼むわ」
「は?無理…」
「タダでケーキ食えんねんけどなあ。晩飯もご馳走やしお菓子もいっぱいやねんけどなー」
「この帽子二個しかないんだけどいいかな」
「むしろそれいらんし」
「財前は主役だからこれ被るの強制ね」
「ほなお前も被るん強制な。ついでに鼻眼鏡も強制なよし決まり」
「ひでえ…」


うまいこと乗せられて財前の奴隷と化してしまったような気がするような気がしないでもない。でも財前の顔がさっきより楽しそうになっていたからまあいいかな、なんて思った私はとってもお人好しだなと思った。



0719
財前はぴば
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