青春のにおい | ナノ


「あっ…つぅー」
「暑いって思うから暑いんだよ。心頭滅却すれば火もまた涼しだよ」
「ちょおお前全力で俺を冷やせ」
「いや聞いてる?」
「聞いた聞いた。よし冷やせ」
「聞いてないやないかーい」
「はっはっはー。よし冷やせ」
「…今ので私の心が冷えたわ」

ギラギラと太陽が盛り散らした7月。体育は殺人的な暑さを私たちにもたらす。外でサッカーをしていた男子はみんな汗だくで体操服は絞れるほどにびしょ濡れだった。私の前に現れたこの男も例外なく、いつも着けているヘアバンは色が変わるほど汗に濡れていた。

「ああもうアッツイ!灼熱地獄や!お助け!」
「仕方あるめぇ、シャツ捲りな!」
「いやん俺には小春という愛する人が…!」
「よいではないかよいではないか」
「お代官さまあーんっ…やのうて早よ冷やせや」
「ボケたのそっちだろ」
「乗んな」
「…必殺冷却ビーーーム!」
「ひょえああ!」

ムカついたので不意打ちでヤツのシャツの中に手を突っ込み制汗スプレーを至近距離でぶちかましてやった。案の定一氏は驚いて奇声を発する。してやったり。

「効果はバツグンだ!」
「バツグンちゃうわだあほ!痛いっちゅーねん!」
「だってホモモンが私に攻撃するから」
「誰がホモモンや。モンスターボール入れへんわ」
「股に2つチンケなモンスターボール持ってんだろがい」
「死なすど。俺のはマスターボールやっちゅーねん」
「そこ乗んなし」
「ちゅうか今のスプレーもっかいやってや。気持ちかった」
「あーはいはい」
「離せや?近くですなや?」
「へいへい」

シャツが捲り上げられたそこにブシューっとまんべんなくスプレーをかけてやった。涼しげな顔をしているホモモン。地味に肉体美だったのがなんか癪だったから乳首にかけてみた。怒られた。

「いやーだいぶ冷えたわ。さらさらやし」
「仕上げにこれを使いなボーイ」
「おお、汗ふきシートまであるとは。お前どんだけ臭いねん」
「オッケーそれ返せ」
「ジョークやジョーク」

拭いたらひんやりするそのシートにやっと満足したようで一氏は一言礼を言いそのまま爽やか笑顔で小春ちゃんのところへ行った。

「あら、ユウくんええ匂いやねぇ」
「やろ!アイツにしてもろてん。なー」
「おう、感謝したまえ」
「ホンマや、二人ともええ匂い」
「ええやろー、お揃いやでー」

そう満面の笑みで肩を組んできた一氏に不覚にも顔が赤くなってしまった。小春ちゃんはそれに気付いて「青春やわあ」って笑ってた。一氏はわかってない。こいつがアホでよかった。




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