反省文 | ナノ


「ごめんなさいもうしませんから許してくださいお願いします」
「あかん。今回ばかりは笑って許されることやないで」


俺のクラスにはよくイタズラをしでかす女子がおる。イタズラと言ってもスカートめくりに落書きとまるで小学生のようなちょっとしたこと。毎日毎日イタズラを繰り返す彼女だが明るい性格と人懐こさのおかげか、それを咎める者はおらずむしろ誰もが皆その行動を温かい眼差しで見守っているようやった。そういう俺も彼女の些細なイタズラには幼い子供の遊びに付き合うような心持ちでいつも対応していた。
しかしここ最近になってイタズラの矛先が俺に集中的に向けられ始めた。何をやられても特に咎めることはせず笑ってされるがままだったのが良くなかったのかもしれない。


「なんでよぅ…」
「今まで笑って許しとったんは笑える程度のイタズラやったからや。せやけど今回のはあんまりにも度が過ぎとる。なんでこないなことしたんや」


そうして甘やかすうちに彼女のイタズラは日毎にエスカレートしていった。俺にだけならまだ良かったがテニス部のみんなにまで被害が及びだし、そして今日、彼女の仕出かしたことに堪忍袋の緒が切れた俺は彼女を取っ捕まえ話(という名の説教)をすることにしたのだ。


「…それは、その」
「まあええ。口で言えんのやったら書いてもらうまでや」
「へ…なにこれ」


言い渋る彼女をよそに俺が取り出したのは400字詰めの原稿用紙10枚。突然目の前にそれを差し出された彼女はきょとんとしている。


「原稿用紙10枚。これにぎっちり反省文書いてもらうで」
「じゅ、10枚も?全部?ぎっしり?」
「当たり前や。なんでこないなことしたんか、迷惑かけた人らに対してどう思っとるんか、反省して今後どう生活態度改めて行動するんか。ちゃんと反省しとるんやったら10枚やなんてあっちゅー間やんなぁ?ん?」


不満そうな顔した彼女に満面の笑みを浮かべてそう言えば怯えた表情で渋々と反省文を書き始めた。

放課後、部活が終わり帰り支度をしていると原稿用紙を抱えた彼女がやって来た。


「…もう書き終わったんか?ちゃんと全部書いたんやろな」


そう言うと無言のまま原稿用紙を俺に押し付けそのまま走り去っていった。いつもと少し様子が違う気がしたが、どないしたんやろか。気になりつつも取り敢えず受け取った反省文がちゃんと書かれてあるのかを確認した。


「白石?どないしたん?」
「顔真っ赤っすわ」


謙也と財前がこちらに寄って来たが二人の声が耳に入らない。それもこれもこの反省文のせいや。理由も迷惑をかけた相手に対してのことも、そして今後の生活態度についても10枚には満たないが確かにちゃんと書かれている。書かれている、が、


「っこんなん反省文とちゃうやろ…!」


気付けば俺は彼女が走り去った方へ駆け出していた。



「 好きだから、気にかけてほしくてイタズラしました。迷惑かけてごめんなさい。もう二度としないから、嫌いにならないで。 」



もっぺん説教し直して、今度は反省文の書き方と告白の仕方も教えたらなあかんみたいや。




いたずらぶれたー
110416-18

何をやらかしたのかはご想像におまかせします(思いつかなかった)
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テーマ「人外ファンタジー」
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