基本的に何をするにも行動の遅いマイペースな私は、何に置いても速さが命のこの人とは絶対に合わない。はず。それなのに何でかこの男は自分と真逆である私に告白なんてものをしてきた。見た目はかっこいいし性格だって面倒見が良く優しくていい人だから寄ってくる女の子は多くて選び放題なはずなのに、よりにもよって、なぜ私なのか。
「どないしたん?またぼおーっとしてんで」
「んー、うん。謙也くんのこと考えてた」
「お、俺のこと?」
告白されてからもう数ヶ月経った今日この頃。断る理由もなくて告白を簡単に受け取った私は今現在、おおよそ自分には合わないはずのこの人のことが大好きになってしまっている。今だって私の言葉になんでか頬を薄く染めている彼にきゅんきゅんしてる自分がいたりするし。
「なんで私たち性格真逆なのに付き合ってるのかなーとか、なんで私はこんなに謙也くんのこと好きなのかなーとか、謙也くん可愛いなーとか」
「ちょ、待て待て!どっからつっこんだらええか分からんし恥ずいからやめえ!」
質問に答えただけなのにわたわたと騒ぎ出した彼にそれを遮られた。あーだのうーだの唸って落ち着きのない謙也くんとそれをぼんやりと見守る私。ほら、こんなとこも真逆。
「…自分、もしかして何で俺が自分のこと好きなんやろとか思ってへん?」
「うん。何でわかるの?」
そう言うとやっぱりな、とでも言うように深いため息を吐かれた。だってだって、私が謙也くんを好きになるのは彼の魅力からして当然のことだけど、私にはそんなものないんだからしょうがないじゃないか。それに加えて私は謙也くんの嫌いなとろくさいマイペース女。ますますこの関係が謎すぎる。
「なあ、その…俺んこと、好きやんな?」
「うん、大好き」
「どんくらい?」
「うーん…。例えるの難しいなあ…。世界一とか宇宙一なんて生ぬるいもんじゃないし、かといって他に形容できる言葉も見つからないし…」
「…ほら、そーいうとこや」
「?」
「自分のそーいう型にはまらんマイペースなとこが好きなんや」
私の言葉に笑いながら、でも少し恥ずかしそうに彼はそう言った。まさかまさか、マイペースなとこが好かれてるなんて思ってなくて驚いたまま固まってたら、くしゃくしゃと頭を優しく掻き撫でられた。
「自分笑いたいときに笑いよるからめっちゃええ笑顔やし、自分に正直やから思ったこと言うてくれて分かりやすいし、言い出したらキリないねんけど、まあ大まかに言うとそんなとこに惹かれてん」
そんなことをすんごく甘ったるい笑顔で言われたもんだから恥ずかしさで体中がむず痒くなった。それが分かったのか今度はニヤニヤしながらどうしたって顔をのぞき込んできて、ムカついたから思いっきりぎゅーって抱きついてやった。顔を赤くして驚く彼にしたり顔をしてみせる。
「…アホ」
「仕返しだよ」
「そないなことするやつには…抱き締め殺しの刑や!」
「ぐおぇ…!苦し…!」
「自業自得っちゅー話や!」
「…ふふ、でもこんな罰ならもっとされてもいいなぁ」
「………もーほんま勘弁してくれ」
「へへ、謙也くん大好き」
「…、俺のが好きやっちゅーねん」
ぬるま湯に浸るような幸せ
110314-15
山なしオチなし