猫のきもち | ナノ


現代には犬や猫の気持ちが分かるという大変画期的な機械が開発されているらしい。本体と首輪に付けるワイヤレスマイクから構成されていてマイクで捕らえた鳴き声を本体に転送し分析、日本語に翻訳されたものが本体のディスプレイに表示される。出力されるのはフラストレーション、威嚇、自己表現、楽しい、悲しい、欲求だそうだ。その他ゲーム的コンテンツも付いているなど充実した機能が備えられた優れものだ。

「…ってウィ○ペディアに書いてあった」
「商品の説明なんか聞いとらんすわ。俺が聞いとんのはなんでアンタがそれを持っとんのかいう事や」
「いやー、その、財前に試してみようかと…」
「…は?」
「犬用か猫用か迷ったんだけどね、財前は犬って言うよりは狼だし、そもそもそのマイペースさとかは完全に猫だから今回は猫用にしたの」
「そもそも俺人間やねんけど。ちゅうか何でいきなりそないなもん俺に使おう思たんですか。ついに頭イカレてもーたんちゃいます?あ、元からか」
「おい」

財前にこれを使おうと思った理由は簡単。財前が何を考えているか知りたいからだ。あんまり感情を表に出さない財前は何を考えているのか正直よくわからない。今楽しいのかとか、もしかしたら落ち込んでたりしてるのかとか、何か少しでもいいから財前のことを知りたい。だからこれ使ってみたら何かわかるかなぁと思ったの。そう言えば少しの間をあけて「ふーん」と興味なさげに話を流されてしまった。

「ん?自分ら何やっとるん?」

二人しかいなかった部室に白石くんと忍足くんがやってきた。ちょうどいい、この機械が人間にも使えるのかお試ししてみよう。そう思い本人にバレないようこっそり電源を入れた。

「二人で何してたん?」
「なんやニヤニヤして何考えとんのですか気持ち悪い」

忍足くんの問いかけに対する財前の返答を拾った機械は財前の今の気持ちを「なんだよもう!プンスカ!」と表示した。どうやらイライラしているらしい。当たってるっぽい。

「ぶふ…!」

機械が勝手にそう表記したんであって財前が言ったわけではないんだけどプンスカ!って。笑いをこらえきれず小さく噴き出すとそれに気付いた白石くんがこちらに近付いてきた。

「マネージャー、それなん?」
「え?あーいや何でもないよ〜あはは」
「…なんや変なもん持ってきたんやないやろなあ」

さっと本体を机の下に隠すと変に怪しんだ白石くんが怪訝そうな表情で顔を覗き込んでくる。「出しぃ」「いやだ」至近距離での無言の攻防戦。徐々に笑顔が黒くなっていく白石くんにさすがに負けそうになっていると、横から抑揚のない声が飛んできた。

「それより二人ともオサムちゃんが呼んではりましたよ。行かんでええんですか」
「え、オサムちゃんが?」
「あほ、そういう事は早よ言えっちゅー話や!行くで白石!」

そう言ってばたばたと去っていった二人を見送ってほっと胸をなで下ろした。バレたらめんどくさいことになるからな〜と思いながら機械を見るとまたもや表示されている。「はやくどっか行ってよ!」だそうだ。

「ほんまうるさい人らやなー」
「…ねぇ、もしかしてオサムちゃんのやつって、」
「ああ、嘘っすわ」

ふっと人を小馬鹿にしたように鼻で笑った財前。機械には楽しいということが表されている。…この機械結構凄いんじゃないのか。

「で?その機械どうやったんですか」
「えっ」
「こっそり使ってはったんでしょ。バレバレや」
「は、ははは、さすがだね。うん、結構当たってるっぽい」

さっきまでの結果を話すとまたふーんって曖昧に返事を返された。それからじーっと私を見つめている。な、なんだ急に。すごく真面目な顔で見つめてくるもんだからなんだか落ち着かない。

「…先輩」
「な、なに」
「なんもないっすわ」
「は」
「なんやその間抜け面」
「いででで!」

ぶっさいくやな〜なんて笑いながら人のほっぺたをぐにぐにと摘む財前。腹立つなんて思いながらふと機械の画面に映った文字を見て、思わず電源を切ってしまった。やっぱりこれ当てになんないかも。




“好き好き大好き”
20110307

人の声にも反応する事があると聞いてやっちまった
商品の説明文は本当にウィキ○ディア様からお借りしちゃいましたごめんなさい
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