指フェチ | ナノ


斜め前にいる白石くんの指先はいつも綺麗でついつい魅入ってしまう。細長くて、でも少し骨張っていて男らしい。爪はいつも綺麗に切り揃えられているしテニス部の割に色白で。女の私も嫉妬しちゃうくらい綺麗だ。
鉛筆やお箸を持つ時、教科書のページを捲る時やふとした瞬間顎に手を添えた時、それからシャツのボタンを止めるときとか、色んな仕草を見せるあの指先が綺麗で魅惑的で素敵だ。こんなことを思う自分は周りからすればさぞかし変態臭く見えるだろう。しかしバレなきゃいいわけで、こっそりみて楽しむ分には問題ない。のぞきをするおっさんみたいな言い訳を一人でもんもんと考えつつ、今日も白石くんの指先に釘付けな私。

うっとりと机に乗せられた彼の指を見ていると不意にその人差し指がとんとん、と机をノックして思考が現実に引き戻された。

「おい、今の質問聞いとったか?」
「…は?え?私ですか?」
「俺確かお前のこと指名したはずやねんけど俺が間違うとったんかなぁ?ん?」
「すいません聞いてませんでした」

眠いんなら眠気覚ましに立っとれ。そう言われて渋々その場に立ち上がる。周りからはクスクスと笑いを押し殺すような声が聞こえて恥ずかしい。けど、白石くんの指が見やすくなったからいいや〜なんて思いながら彼の方を見ると視界に飛び込んできたのは前を向いているはずの彼の顔。楽しそうな表情がなぜか私を見つめている。

「なぁなぁ、」

普段ほとんど会話をしたことがない彼に小声で声をかけられ驚いた。とんとん、と持ち上げたノートを指先でたたく。ここに注目しろと言うことらしい。意味も分からないまま注目していると開かれたノートの上で彼の指が何かを描くようにするすると動く。

「?」

文字を書いているのは分かったけどなんて書いたのかまでは分からなかった。というか指が美しすぎてそれどころではない。
理解していない私を見てくすりと笑った白石くんは、今度は手を口の横に添えてひそひそ話をするように小さく小さく囁いた。


「 見 す ぎ や 」



フェティシズムの憂鬱
20110305
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -