眠れない二人 | ナノ


時刻は午前四時を過ぎた。普通ならとっくに夢のなか、だけど今日は何故だか目が冴えて冴えて眠れない。眠りたい、眠れない。眠りたい、眠れない。目をつぶっても寝返りを打っても眠気がこない。居心地が悪いような、いらいらする。目を開けてみると視界いっぱいに広がる闇。次第に暗闇と静寂に包まれたこの空間にぽつりと、横たわってる自分が酷く孤独に思えて。無性に誰かに会いたくて会いたくて、泣きたくなった。はやくはやく、夜が明けてくれないか。
どうにか気分を紛らわせようと手に取った携帯。こんな時間に起きている人間はきっと誰もいないだろうからメールや電話は出来ない。ならばと気休めに色んなところで日記を片っ端から更新してやった。コメントは来ないと分かっていたけれど、どこかで期待しながら。
書いてはみたけどやっぱり誰からもコメントはなかった。寂しい。けどもう諦めよう。何とも言えない孤独感を抱えたまま携帯を放り捨てた瞬間、震えたそれ。期待しつつも裏切られたときの予防線にどうせメルマガ、なんて呟いてみて恐る恐る開いた受信ボックス。そこにはコメントされていることを知らせるメールが届いていた。

「いつまで起きとんねん」

コメントにはそう書かれていた。サイト内でのその人の名前はヒカル。友達になっただけで普段は全く絡んだことのないその人。確か学校が同じだったから申請を出したんだ。仲良くなんてないけど今は誰でもいい。絵文字も何もない素っ気ないコメントだったけどこの時はすごくあったかいものに思えた。

「そっちこそ何で起きてんの」

当たり障りのない、でも返事が帰ってきそうな内容でコメントの返事をする。すると意外にも早いペースで返事が帰ってきた。

「なんや目が冴えて寝れんのや。自分は?」
「私も。なんかこう、もやもやするっていうか」
「あー、分かるわそれ」

簡素な文に初めはすぐに返事が返ってこなくなるんじゃないかと思った。だけど意外にも返事はどんどん返ってきて。しかも向こうも私と同じような状態らしくて、いつの間にか盛り上がっていた。

時刻は午前五時を回ったころ。気付けば先ほどまで感じていた孤独感は消えていた。変わりに優しい睡魔が私を包み出す。

「ごめん、なんか眠くなってきた」
「奇遇やな、俺もそれ言おう思てた」
「ほんと?よかった。ヒカルくんのおかげで何か助かった(笑)」
「何やそれ(笑)ほなもう寝るわ」
「うん。おやすみ!」
「おやすみ」

最後のメールを確認したところで目を閉じた。ゆっくりと睡魔が私を心地よい眠りの世界へ連れて行く。薄れゆく意識のなかふとヒカルくんのことを思い、何故だか笑みがこぼれた。



液晶の向こう側を夢見るの
2011.02.21

ダビデじゃないの
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