隣のあの子 | ナノ


クラスの中にひとりふたりは必ずと言っていいほど喧しいやつがいる。俺のクラスにも例外なく四六時中ぺちゃくちゃしゃべっとるやつがいて、何とも運が悪いことに俺は席替えでそいつの隣を引き当ててしまった。

「えー横財前?」
「なんや」
「もっとテンション高い子がよかった…」

俺かてお前みたいな雌ゴリラ嫌じゃボケ。席替えして開口一番にそんなことを言われ内心毒づいたが相手すんのもだるいと思いあえて言葉は出さずシカトしてやった。俺って大人や。

「おい」
「…」
「おい」
「…」
「ちっ、またか」

次の席替えまで最悪の日々が始まると思っていたあの日から一週間。想定していたストレス生活は今のところ微塵もない。横の騒がしかった奴は俺の隣になってからは気持ち悪いぐらい大人しくなってしまった。というよりほとんど寝とる。今も消しゴム借りよう思て声かけたのにこのざまや。隣人はよそ向いて熟睡中らしかった。この一週間会話したのなんか「今何ページ」「人に聞くくらいなら寝んなやアホ」「…ごめん」「…98」「ありがと」こんだけ。他の奴の嫌味なら反抗すんのに何で俺にはごめんで終わりやねん。なんか無性に腹が立ったから勝手に奴の消しゴム使って消しカス投げつけたった。ざまあ。

「あっひゃひゃひゃ!」
「…」
「は、腹が…!割れる…!」

昼休み、少し遠くの席で友達と談笑している奴が見えた。机をバンバン叩きながら腹を抱えて大笑いしとる。さっきまで爆睡しとったくせにいつの間に覚醒したんや喧しい。俺にもそんぐらい笑って見せろやハゲ。

…いやいやいや何考えとんねん俺アホちゃうか。気持ちわる。



気になる隣人
20110131
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