わたしがこの世に生を受け暗いそこから顔を出した時、そこにその人はいた。生まれて間もないわたしは気持ち良さそうに日の光を浴びて眠るその人と青空のコントラストに地球の美しさを見たのだ。
その人は晴れた日にはいつもそこで心地良さそうに日向ぼっこをしていた。大きなあくびをして、ぼんやりと空を見上げて、たまに物思いに耽るように遠くを見つめていた。言葉も話せない小さなわたしは一緒に風に吹かれて太陽よりもその人ばかりを見ていた。
それは穏やかな風が吹くいつもと変わらない日のことだった。わたしはその人と初めて目があったのだ。あの青空よりも深くてきれいな瞳をしていた。恥ずかしくて少しだけ俯くとその人はわたしを優しく撫でてくれた。初めて触れた温度はあたたかくて、くすぐったくて、その瞬間からわたしの世界は鮮やかな虹色になって。わたしも、この人に色をあげたいと思った。
そうしてわたしはきれいなブルーになりたくて、たくさん光を取り込んだ。雨の日にもめげずに背を伸ばした。今夜、ようやくわたしは大人になる。はやく、あの人に会いたい。
次の日、遠慮がちに顔を覗かせたわたしを見た彼は微笑んでくれた。「きれーに咲いてきてんじゃねーか」そう笑いかけてくれた。うれしい、うれしい。色付いたそこに温かな指が触れる。ああ、ああ、愛しい。
わたしは恋をした。神様、散るその時まで、どうかわたしに、音を与えてください。この短い人生を唄える音を。あなたのために咲いたんだよと、伝えられる音を、ください。
なんて、冗談半分で願ったら気まぐれな神様はこんな小さなわたしの願いを聞いてくれた。彼と似た四肢があって、彼と違ってか弱いけれど声が出た。突然現れたわたしに驚いた表情の彼。なんて、なんて声をかけたら、いいだろう。
「わたし、わたしは、」
ようやく紡いだ言葉はひどくたどたどしく、それでも彼へと声が出せたことで伝えたいことが溢れて、わたしはその場で涙を流した。
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