廊下側の一番後ろに座るわたしは黒板を見るふりをして自分と対極にある窓際一番後ろの席をちらりと盗み見た。そこに座る鋭い双眸は黒板をみている。と思っていたらこちらを向いた。思わずぎくりと肩を揺らすとその眼光は一段と強さを増した。

一番遠くにいるその人は気付けばいつもわたしを睨んでいた。いつからかはわからない。わたしがその痛い視線に気付いた時からずっと、何をいうでもなく、ただひたすら。もちろんわたしじゃないという可能性はあるがその確率は日を追うごとにゼロになった。何故ならわたしと目が合うとその人は肘をついてにらめっこの臨戦体勢に入るからだ。当然周囲の人間を確認してもわたし以外の人は黒板とにらめっこだった。

にらまれる覚えは、ない。クラスメートではあるが特別仲がいいということもなく、会話は当たり障りのない義務的なものしかしたことはないのだ。にらまれる理由なんて皆目見当もつかない。

だから気になって気になって仕方がなかった。感じる視線が気になって授業に集中出来やしない。それは日に日に強くなるばかりだった。

「あ、あの」

授業がおわってすぐ、わたしは勇気を出して離れた席に向かった。机の前に立つと遠くから見ていた視線はより一層鋭くて肌に感じる痛みが増す。なにも言わずただ真っ直ぐにわたしを見据える彼の迫力に負けそうになりながらもどうにか声を絞り出した。

「わたし何かしたかな」
「…」
「勘違いじゃなかったらいつも睨んでるよね?だから気になって、」
「遅い」

彼はそうわたしの言葉に被せるように不機嫌そうな声を出すと、ぶらんと垂れていた手をとった。一瞬の間に指を絡められびくりと肩がはねる。

「俺はもっと前から気になっとった」

「気付くん遅すぎるわ、ばーか」

絡まった指先に力が込められる。鋭い眼光は相変わらずわたしを射抜く。だけど今日のは威力が強すぎるみたいで、どうやら心臓にまで突き刺さってしまったようだ。

「目付き悪すぎるんだよ、ばか」




不可解すぎる(*^○^*)
一ヶ月遅れの誕生日祝いです財前おめでとう!
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