「彼はきっと、大きな幸せを運んでくるよ」

幸村さんはそう微笑んで休憩室を去っていった。不思議な人だったなあ。なんだか全てをわかっているような。なんとも言えない人だった。

家に帰って私は用意した鉢と土を手に庭に出た。調べた通りに丁寧に花たちを掘り出し鉢に植え替える。がんばって育てていこうと決めた。そしたら寂しくないし、楽しみも増える。雅治くんはそれも見越してこの花を咲かせたのかな。もしそうだったらなかなかやるなあ。花を見つめて彼のことを考えると自然に笑みがこぼれた。



数日後、郵便受けに一通のエアメールが届いていた。外国に知り合いがいる訳ではない。不思議だな、そう思いながらとりあえず中を見てみると、そこには日本語が書かれていた。

手紙の内容は言葉も出ないほど驚きしかなくて、私は少しの間固まっていた。差出人は母から。内容は帰国するとのことだった。なにがなんだか、訳がわからなくて、どうしようもないまま時間だけがすぎた。

そうして両親が帰国する日になった。心の準備など出来ていない。今さら会ったってどうしていいかも、喜んでいいか怒っていいかもわからない。複雑な思いのまま、空港に向かった。

「おかあ、さん」

だけど、会ってしまえば何て言うことはなかった。私の姿を見つけた母は一目散に抱きしめてくれた。中学生から会ってないのに、よくわかったね。昔より小皺が増えて小さくなった母はずっとずっと今までごめんねと、呟いた。そばにいた父も涙を浮かべていた。ずるいなあ、これじゃあ怒れないよ。

「お父さん、お母さん。おかえりなさい」

久しぶりに、子どもみたいに泣きじゃくった。



雅治くん、ありがとう。とっても温かい春が来たよ。





あとがきと花言葉

mae 


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