売店でアイツにでっかい声で名前呼ばれたときは恥ずかしいやらなんやら、とりあえずそばに行って頭叩いてもうた。そしたら楽しそうにキャッキャ言うて誰かの後ろ隠れて、こどもみたいやと内心微笑ましく思いながら盾になっとるやつみたらそれが謙也さんやって。委員会が同じでアイツがさぼっとるとかで絡んではった。仲良さげなふたりを見たら急に心臓のあたりが痛いような、ざわざわした。なんやごっつイライラする。
「なあなあ財前」
「…なんですか顔きもいことなってはりますよ」
放課後、部活中謙也さんがにやにやしながらこっちに来よった。ただでさえ苛ついとんのにいつもよりさらにうっとうしいオーラ放ってこっち寄ってくるもんやから口調がきつなった。
「自分ら付き合うてるん?」
「…は?」
それでも謙也さんはそんなん気にも止めんと変わらずにやけ顔で、そんなこと言うてきた。
「せやから自分ら付き合うてんのかって」
「なんですか急に」
「やって財前があないテンション高いとこ初めてみたしアイツもにっこにこ笑っとったし」
なんやふたりただならぬ雰囲気やったで〜このこの〜とか言うて肘でつついてきた。どこのおっさんやねん。めっちゃうざい。
「アイツはいっつもあんなんでしょ」
「いやいや、俺としゃべったらめっちゃだるそうやしあんなケタケタ笑わんしな」
それはアンタがおもろないだけとちゃいますか、と内心思うたけどさすがに落ち込みそうやから言わんかった。それよりも、周りからみた俺らはそんな風に見えとるんかと、そればっかりが頭をぐるぐる駆け回る。
「…付き合うてるわけないやないですか」
「ほんまか?心配せんでも内緒にしとくで!」
「しつこいっすわ」
「えー、ほな好きとかもないんか?」
「え…」
謙也さんの言葉に、どきりと心臓がはねた。アイツを好きか、やて。
「やからアイツのこと好きなんかっちゅーてんねん!」
「そんなん…」
「ん?」
「そんなん、考えたこともなかった」
好きかどうかなんて考えもせんかった。初めて会うたときこそ人の縄張りでなに寝とんねんコイツと思うてたけど。いつの間にか寝とるアイツが気になってしゃーないようになって、起きろ起きろ思うとったらやっと起きて、そっからはあっちゅー間に仲良うなって。一緒におるだけで楽しいて、柄にもなく鑑賞会する日が待ち遠しいてしゃあなかったり、授業中とかアイツなにしてんねやろって考えたりとか、今日なんか他の男としゃべっとんの見ただけでイライラしてもうて…
あれ、俺アイツのこと好きなんちゃうこれ
その存在はなにかに気付くとき
0217
謙也くん乙女化
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