ひょんなことから仁王と大変濃い絡みがあるようになったわけだけども。正直こうなる前までは変なやつだと思いこそすれまあ顔はかっこいいし行動も不思議っ子という風にみればかわいいと思えなくもないよねと思っていた。つまりまあまあ好印象だったわけだ。

「腹へったーなんか食いもんくれ」
「どうした丸井くんのようだ」
「あんな豚ちゃんと一緒にせんで」
「丸井くーん!なんかコイツが」
「ジョークじゃジョーク!」

慌ててわたしの口を塞いできたコイツににやりとほくそ笑んでやった。

「ちなみに食い物はない残念デシター」
「ウソはいかんぜよ。その鞄に飴ガムキットカットじゃがりこポッキーが入っとることはお見通しじゃ」

全部言い当てられた。コイツ絶対わたしの鞄のなか勝手に漁ってる。最悪だわたしのプライバシー死んだ。

「キットカットがいい」
「なに偉そうに注文してんの?お前なんか飴でもしゃぶってろ」
「なあなあ柏木さんおもしろいモノあるんじゃけど見るか?」
「クッッッソ…!」

前の席の気の弱そうな女子にひらひらと紙切れを見せびらかす仁王に悔しいがキットカットを差し出した。
前まではそれなりに印象はよかった。しかし今は言わずともこんな感じだ。毎日毎日図体のでかい悪ガキの相手をしているようなうざさ。顔がよくても中身がこれじゃ意味がない。

「それ毎日持ち歩いてんの?」
「まあな、お守りじゃき」
「さいですか…」

疲れてきたから窓の方を向いて机に伏せた。最近はこのうざさに慣れてきたのかちょっとずつスルースキルを身につけはじめた。まあこんなスキル出来れば身につけたくもなかったのだが。

「なんじゃ寝るんか?」
「んー寝る」
「つまらんのー風邪引いても知らんぞ」
「んー…」

今日は天気がよくて陽射しが気持ちいい。仁王回避のために伏せただけだったがほんとうに眠くなってきた。まどろむ意識のなかで仁王ののんびりした声が響いていた。



「おーい、そろそろ帰るぜよ」

ふわふわと頭を行き来する温かい感触にうっすら目を開ける。

「…え、暗っ!」

開けた視界に映る景色があまりに薄暗くて一気に覚醒した。慌てて時計を見るともう18時を過ぎている。

「…寝すぎた」
「よう寝とったのう。施錠出来んっちゅうて風紀委員が困っとったぞ」

振り返ると教室の鍵を人差し指でくるくるまわしながらわたしを見つめる仁王がいた。あれ、なんでコイツいんの。そう思っていたらずるりと肩からなにかが落ちた。

「…ジャージ?仁王?」
「あー…まあ風邪引かれたら困るんでな、」

ジャージに刺繍された名前を見て首をかしげると珍しく口を濁す仁王がいた。その様子から察するに、つまり、え。

「とりあえず早よ帰るぜよ。腹へって死にそうじゃ」

わたしからジャージを取り上げ自分の椅子に掛けるとわたしの手を引きさっさと歩き出した。そのまま鍵を返して、帰りに仁王の行きつけのコーヒーショップで一緒にご飯を食べて家まで送ってもらった。突然優しくされたから戸惑ってつい一緒に食事なんてしてしまったじゃないか。仁王め、ほんと変なやつだ。

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