暖かな陽射しが注ぐ午後、窓際の席でぼんやりとシャボン玉を飛ばしている銀髪の男子を数人の女子たちが遠巻きにうっとりと見つめている。やれクールだなんだと騒ぎ立てながら毎日毎日。よくもまあ飽きないことだ。

「なに考えてるんだろう?」
「きっと私たちには想像もつかないようなことよね」

なにそれ。それって奇人変人って言ってるようなものでは?ただシャボン玉飛ばしてるだけなのに。そもそも教室でひとりシャボン玉飛ばして遊ぶってちょっとこわいし誰も突っ込むひといないのかな。

「ほんと仁王くんってミステリアスでかっこいいよねー!」
「え、あ……ウン」

突然話を振られ慌てて愛想笑い。あの銀色頭、仁王雅治を崇拝する彼女たちに本音を言おうものなら反感を買って忽ち集団リンチの刑に処され兼ねない。仁王は学年屈指の、下手をすると全校でもトップに入るだろうモテ男なのだ。触らぬ神に祟りなしってやつである。

「あっ!こっち向いた!」

たったそれだけのことで小さく黄色い声をあげて、まるでアイドルのように騒ぎ立てる女子たち。確かにすごく綺麗な顔だとは思うけど、同級生相手にそこまでなるかぁ? なんて鼻で笑ってたら、いつの間にかこっちを向いていた仁王と目が合った。そしてふっと一瞬笑ったかと思えば、またシャボン玉を飛ばしだした。謎の微笑みに沸く女子たち。なんだったのだろう。いや、私を見ていた訳ではないかもしれないけど、なんとなく嫌な予感がした。



「おお、隣は名字さんか」

よろしく と、隣でへらりと笑みを浮かべる男子に昨日嫌な予感がしたことを思い出した。

今日は一限目の授業が担任の教科だったのだが、そこで何故か席替えをすると言い出した。突然のことに沸き立つみんな、というか主に女子。彼女らは仁王をはじめ丸井くんやその他イケメンの隣を狙っているから数少ないこの席替えに闘志を燃やしているようだった。かくいうわたしもずっと一番前の席だったから今回の席替えは嬉しいのだけど。

が、しかし。その考えは新たな席が決まった瞬間に消え失せた。席は窓際一番うしろ。最高だ。…いや、最高だった。隣の人物が決まるまでは。

「よーし じゃあ残り時間授業するぞー」
「せんせー、俺昨日勉強してたらジュースこぼして教科書ダメになったんじゃけど」
「じゃあ隣の人に見せてもらいなさい」
「はーい」

そういってガタガタと机を動かしてわたしの方にぴったりとくっつけたその人は「すまんのぅ」と間延びした声で言った。悪いと思ってるようにはとても見えなかった。
何故よりによって仁王の隣になったんだ。というか反対側の人のところにいけばいいのになんでこっちに来たんだよ。女子たちの視線が痛すぎるからやめてほしい。こんなことなら一番前の席だった時の方がよほど天国だった気さえして、そっと額に手を当てた。
ああもう、自分の不運さがにくい。

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