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「ほほーう、参謀がなあ…」
「まじ怖いんだけど柳くんまじ怖いんだけど!」
「参謀にびびっとるようじゃうちのマネージャーは務まらんぜよ」
「やらんわ!」

授業に入りノートを立てて珍しくもわたしからたくさん仁王に話し掛けた。仁王の間延びした声を聞いて恐怖を取り除きたかったからだ。こいつの存在も少しは役に立つらしい。

「参謀より幸村の方が何倍も怖いぞ」
「うそだ幸村くんは天使のごとく可憐で素敵なのに」
「魔王の間違いと思うがのう」
「それよかどうしようマネージャーやりたくないんだけど!」
「ええじゃろ別に、どうせ暇なんじゃし」
「決めつけんな」
「俺の部活終わるまでただ寝とるぐらいなら誰かの役に立った方がええぞー。情けは人の為ならずってな」
「お前らに情けかけるぐらいならご飯にかけるわ」

同じ面倒くさがりなら少しは味方してくれるかとも思ったが、まあ甘かった。一緒に部活しようぜーとか適当なこと抜かしてやがる。仁王を良く見すぎていたようだ。これからは今まで以上に軽蔑しようと思う。

「なんなら俺専属になってもええぞ」
「もういいあんたを頼ろうとしたわたしが馬鹿だった」

口を尖らせ明らかな不機嫌オーラを放ったまま仁王とは反対の窓の方へ顔を向けた。別にいいし丸井くんに相談するし。仁王とか犬のうんこ踏んで滑って頭強打して死んでしまえ。

「おいおい拗ねなさんなって」
「拗ねてないし」
「今のは冗談ぜよ。俺は味方せんとは言っとらんかろ」

そっぽを向いたわたしの頭を撫でて小さな子に話すみたいに言う仁王。さっきの柳くんのことがあったからか、仁王の手のひらになんとも言えない安心感を覚えた。

「じゃあ協力してくれるわけ?」
「してやらんこともないが、条件がある」
「金はないからな」
「ちがうちがう」
「家にも上げんぞ!」
「それは言われんでも勝手に行く」
「オイコラ」
「まあまあ、俺の要求はもっと簡単なことぜよ」

そう言ってケータイを取り出す仁王。そしてお前も出せと右手を差し出した。

「…まさか」
「番号とアドレス、教えんしゃい」

やっぱりか…!と心の中で落胆した。漫画だったら背景にガーン!ってな効果音が付いてただろう。これまで鞄の中見られたり部屋に勝手に入られたりしてきたが携帯だけはロックを掛けて死守してきた。それはデータを覗かれることよりも自分の連絡先を知られたくなかったからだ。

「チェンジで」
「却下」
「いやまじで番号とか教えたくないんだけど」
「悪用せんから心配すんな」
「そんなもん大前提というか常識だろうが」

いつでもどこでも仁王と話せるみたいな常に繋がってることになるのを考えただけでうんざりしてゲロ吐きそう。と、そう言うと仁王は笑った。

「俺の番号は貴重なのにのう」
「みんな可哀想な価値観してるのね」
「まあどうしてもと言うならしょうがない。女子にでも聞くか」
「お…、ま、待てはやまるな」

慌てるわたしを見て悪どい笑みを浮かべた仁王は「なんならお母さんに聞いてもええぞ」と調子に乗って言いやがる。そしてわたしは言わずもがなどっちも究極に嫌なわけで、つまりわたしの敗北は呆気なく決まったわけで。

「…よし、これでお前さん家に行くとき前もって連絡出来るぜよ。よかったのう」
「よくねぇよまず来んなよ…」

ディスプレイに映る送信完了の文字にわたしはがっくりと肩を落とした。

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