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「あんま意識してなかったけどお前ら仲良いよなー」

公民の授業で丸井くんが隣に座ってきた。社会と外国語の選択授業はどちらも仁王とは別々で、唯一離れられる最高の教科。友達とも離れてしまってぼっち状態ではあるがまあヤツがいないだけ気楽でいい、と今日も独り黙々と勉強しようと思っていたとき、その赤はひょっこり現れた。

「それ喧嘩売ってるの?」
「違うって!第三者から見た素直な感想!」

それまでほとんど話したことはなかったのだが日曜日に遊んだ(というのかわからないけど)からか丸井くんは大変馴れ馴れしくなっていた。彼も大変人気があるので女子の目が些か気になる。

「わたし仁王と和気あいあいとしてるように見えないと思うんだけど」
「いや、名字さんはすんごいうざそうな顔してるけど仁王が楽しそうなんだよ」
「そりゃね、散々人のことおちょくってるからねあのクソ白髪」

気にはなるがしかし今は授業中だし選択授業で人数が分散され広い教室に人が疎らで近くても一つ二つは席が離れている。だから話の内容はあまり聞こえないはず。という最高の機会にせっかくだからなんか仲良くなったっぽい丸井くんには仁王のことをボロクソ言わせてもらう。小声ながらもマシンガントークだ。

「日曜も思ったけど仁王相手にそこまで言うやつ初めてみたわ」
「女子はみんな騙されてるんだよ」
「いや男でもあいつに飛び蹴りしたやついねーよ」

席替えしてから今日に至るまでをざっと話すと丸井くんは腹と口を押さえて笑うのをこらえていた。仁王と違って無邪気な笑顔が大変眩しい。

「そうなの?」
「真田ってA組にいるだろぃ?」
「あー、あの厳格そうな…」
「そうそう。そいつテニス部副部長でさ、まあ見た目通りすんげえ厳しくて」
「あー知ってる。前友達とテニスコート見に行ったとき真田くんの怒号飛びまくってた」
「だろぃ?なんかやらかしたら殴られるし」
「うわこわー…」
「テニス部はみんな真田のこと怖がってんだけど、仁王は全くでさ」

部活さぼるわ真田に反抗するわですげーわけ。と呆れてるのか感心してるのかよくわからない様子の丸井くん。

「いたずらとかたまにやってるけど誰かに屈する仁王は初めてみたわー」
「屈してないよあれ多分怒るわたし見て遊んでるだけ」

ため息混じりにそう言うと丸井くんはへぇーとかふぅーんとおもしろそうに笑って頷いた。何か言いたそうな顔をしている。

「なんすか」
「いやー、おもしれーなって」
「なにが」
「まあさ、とりあえず遊んでやってくれよぃ」
「出来れば速やかに引き取ってほしいのだが」
「真田に頼んでくれ」
「っし!じゃあ今日チクろ!」
「ぶはっ!まじかよぃ!俺も行くわ!」
「丸井と名字、後で職員室来なさーい」

授業終了5分前、とうとう先生に怒られてしまった。だがしかし、なにやらいい友達が出来たみたいだから良しとしようと思います。

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