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「えー、じゃあお前ら付き合ってねーの?」
「そうです」

むっしゃむっしゃとケーキを貪る丸井くん。人の部屋にズカズカと上がり込んだかと思えば普通にくつろいぎだしたんだからほんと神経疑う。仁王の友達だからか。類友ってやつなのか。

「まじかよ俺赤也とジャッカルにメールしちゃったし。あ、このケーキ一口くれ」
「…欲しければ今すぐその赤也って子と桑原くんに訂正のメールを入れろ」
「えー」
「ブンちゃん、言う通りにせんと黄金の右ストレートが来るぜよ…」

帰宅直後わたしの渾身の一撃を食らい今までのびていた仁王が復活した。そのまま死んでいればよかったのに。しかし仁王の助言により丸井くんは顔を引きつらせてメールをし出したからまあよしとする。現状は変わらず全然良くないけど。

「で、何故丸井くんがここにいる」
「ああ、ケーキ買いにカフェ行ったら仁王にばったり会ってさ、何やってんだって聞いたら彼女のお使いっつーから。おもしろそうだしついてきたわけ」
「…仁王歯ァ食いしばれ」
「ちが、彼女と遊ぶって言えばついて来んと思ったんじゃ」
「だって仁王パシる女とか聞いたことねーし。見たいじゃん」
「あー、…まあいないだろうね」
「まーまさか名字さんとは思ってなかったけど」

おしとやかな女子かと思ってたと話す丸井くん。まじかなにそれ嬉しい。うざいやつかと思ってたけど訂正しよう。仁王の類友とか思ってごめんね。

「丸井くんエクレアあげる。ここのクリームたっぷりで美味しいんだよ」
「まじ?サンキュー!」
「ブンちゃん嘘はいかんぞ」
「はあ?事実だろぃ?名字さんかわいいじゃん」
「丸井くんカルピス作ってきてあげるね」
「やりぃ!濃いめで頼んだ!」
「まかせろ!」

やれやれとでもいった顔の仁王を横目にわたしはるんるんでリビングに向かった。コップは…まあ一応三つ机に並べてカルピスを捜索。未開封のを発見した。

「おー、ちゃんと俺のもあるんか」

原液注いでると仁王が現れた。あいつだけうっすいの作ってやろうとか思ってたけどその計画は儚くも散った。表情を見るにやられるってわかって来たらしい。

「オキャクサンだからね一応。一応は」
「二回も言わんでいい」
「二回しか言ってない」

丸井くんは濃いめだっけ。仁王はめんどくさいしわたしと同じでいいや。氷と水を入れてマドラーでからからと混ぜてこんなもんかなーと自分のを飲んでみた。完璧だとひとつ頷いて、ふと視線に気付く。仁王が向かいに座り頬杖をついてこっちを見ている。顔がなにやら気持ち悪い。

「なに」
「今日の晩飯なん?」
「いや昼飯も今から…え、夜までいる気」
「プリッ」

てへぺろ的なとぼけた顔をされてめまいがした。さらには昼飯食ったら勉強するぞと言われてぶっ倒れそうになった。

「なんで休みまで…」
「前に言ったじゃろ。お前さんには授業中と放課後と休み使って数学教えるって」
「…言ってましたネ」
「ちゅうわけで肉食いたい」
「…もう好きにしてくれ」

どうせ拒否しても無駄なことはわかっている。休日消えたとうなだれたら仁王がカルピスに手を伸ばした。

「ん、ちょうどいい濃さじゃな」
「さいですか…」
「味の好みが合うんかのー」
「そんなのいやすぎる」
「これは晩飯も期待できそうぜよ」
「…は?」

鼻歌まじりに肉肉言いながら部屋に戻っていくやつの背中を呆然とみつめた。待て待てどういうことだ。まさか作れとでも。
丸井くんのカルピスを催促する声が聞こえるまでわたしは自分の不幸さにひたすら頭を抱えるのであった。

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