問題児だらけ
忍足と喧嘩した
「最近忍足君来ないなあ」
「優奈と喧嘩したらしいで」
「あー、忍足君ピリピリしてる優奈に普通に話しかけとったもんなあ」
部活中、一人でストレッチをしていると、こんな会話が耳に入ってきた。いまだに私は自分でもわかるくらいにピリピリしてて、部活仲間も寄り付きやしない。おまけに忍足とも言い合いしてしまったので、毎日のように陸上部に顔を出していた忍足も、勝負を挑みに来なくなった。だけど…
「あれ、忍足君おるやん」
「ほんまや、おーい忍足くーん!木の後ろなんかで何しとるん?」
陸上部員が声をかけた方を見ると、木の後ろからこちらの様子をうかがっている忍足がいた。なにしてんだか…
「忍足君、また優奈に用?」
「なっななななっ、別に用なんてないで!!」
「え?」
「ほんまやで!通りかかっただけや!!」
そう言うと、忍足は光の速さでテニスコートへ戻っていった。忍足は分かりやすい奴だ。きっとこないだの喧嘩を気にしているんだろう
「…はあ」
私は何をしてるんだろ。試合の前になるといつもこうなってしまう。ピリピリして、人に迷惑かけて…。
「今度、忍足に謝らなくちゃ」
忍足には悪いけど、とにかく今は、週末の試合に向けて練習しよう。
*
白石視点
「はあー…」
「謙也ーため息うるさいでー」
謙也が桜井と喧嘩してから、部活にくるようになった。いや、当たり前のことなんだけど、最近までのアイツからはものすごい進歩のように思える。陸上部入り浸ってたし…。だけど毎日毎日ため息が絶えない。なんやねんコイツ
「ほら、ラケット持ちや」
「…はあ」
「辛気臭いなあ、桜井も試合終わったら機嫌も元に戻るんちゃう?」
「…ちゃうねん」
「なにがちゃうんや」
「………」
謙也はまた黙ってしまい、足もとをじいっと見つめていた。わけわからん。もう放っといて練習に戻ろうかと思ったその時、謙也が口を開いて、ポツリポツリと話し始めた
「…桜井の奴、今日も一人やった」
「…まあ、ピリピリしとるいうてたもんな、そりゃそうやろ」
「せやけど、そんなん寂しいやろ?」
「…うーん、まあ、せやな」
「俺、あいつのために何もできひんのかなーって…」
…謙也の奴、そんなこと気にしてたのか。
「やっぱお前、優しいな」
「…なんやねん、きしょいわ」
「そんなに桜井のこと好きなんか?」
「な!ななななな、アホか!ちゃうわ!」
謙也はとにかく分かりやすい。顔真っ赤にしてそんなこというもんだから説得力の欠片もなくて、笑いそうになってしまった
「でもま、桜井自身の問題やしな。なんかしてやるって言うても、差し入れ持ってくくらいしか無いんちゃうの?」
「はあ…差し入れなあ…」
「いい加減練習するで」と謙也のケツをラケットで叩くと、しぶしぶいうことを聞いてコートへ入り、練習を再開しはじめた。コイツ、自分も大会迫ってることわかってるんやろか?
「謙也クンやっと練習再開したんやなあ」
「ほんまに手のかかる奴ばっかやで。あ、小春、千歳は?」
「今日はまだ来てへんでぇ〜」
「はあ…どいつもこいつも…」
ほんまに手のかかる奴ばっかりやわ。