問題児だらけ

忍足と喧嘩した







「最近忍足君来ないなあ」
「優奈と喧嘩したらしいで」
「あー、忍足君ピリピリしてる優奈に普通に話しかけとったもんなあ」




部活中、一人でストレッチをしていると、こんな会話が耳に入ってきた。いまだに私は自分でもわかるくらいにピリピリしてて、部活仲間も寄り付きやしない。おまけに忍足とも言い合いしてしまったので、毎日のように陸上部に顔を出していた忍足も、勝負を挑みに来なくなった。だけど…



「あれ、忍足君おるやん」
「ほんまや、おーい忍足くーん!木の後ろなんかで何しとるん?」





陸上部員が声をかけた方を見ると、木の後ろからこちらの様子をうかがっている忍足がいた。なにしてんだか…



「忍足君、また優奈に用?」
「なっななななっ、別に用なんてないで!!」
「え?」
「ほんまやで!通りかかっただけや!!」




そう言うと、忍足は光の速さでテニスコートへ戻っていった。忍足は分かりやすい奴だ。きっとこないだの喧嘩を気にしているんだろう



「…はあ」



私は何をしてるんだろ。試合の前になるといつもこうなってしまう。ピリピリして、人に迷惑かけて…。




「今度、忍足に謝らなくちゃ」





忍足には悪いけど、とにかく今は、週末の試合に向けて練習しよう。









白石視点



「はあー…」
「謙也ーため息うるさいでー」


謙也が桜井と喧嘩してから、部活にくるようになった。いや、当たり前のことなんだけど、最近までのアイツからはものすごい進歩のように思える。陸上部入り浸ってたし…。だけど毎日毎日ため息が絶えない。なんやねんコイツ



「ほら、ラケット持ちや」
「…はあ」
「辛気臭いなあ、桜井も試合終わったら機嫌も元に戻るんちゃう?」
「…ちゃうねん」
「なにがちゃうんや」
「………」


謙也はまた黙ってしまい、足もとをじいっと見つめていた。わけわからん。もう放っといて練習に戻ろうかと思ったその時、謙也が口を開いて、ポツリポツリと話し始めた



「…桜井の奴、今日も一人やった」
「…まあ、ピリピリしとるいうてたもんな、そりゃそうやろ」
「せやけど、そんなん寂しいやろ?」
「…うーん、まあ、せやな」
「俺、あいつのために何もできひんのかなーって…」




…謙也の奴、そんなこと気にしてたのか。



「やっぱお前、優しいな」
「…なんやねん、きしょいわ」
「そんなに桜井のこと好きなんか?」
「な!ななななな、アホか!ちゃうわ!」



謙也はとにかく分かりやすい。顔真っ赤にしてそんなこというもんだから説得力の欠片もなくて、笑いそうになってしまった



「でもま、桜井自身の問題やしな。なんかしてやるって言うても、差し入れ持ってくくらいしか無いんちゃうの?」
「はあ…差し入れなあ…」



「いい加減練習するで」と謙也のケツをラケットで叩くと、しぶしぶいうことを聞いてコートへ入り、練習を再開しはじめた。コイツ、自分も大会迫ってることわかってるんやろか?



「謙也クンやっと練習再開したんやなあ」
「ほんまに手のかかる奴ばっかやで。あ、小春、千歳は?」
「今日はまだ来てへんでぇ〜」
「はあ…どいつもこいつも…」



ほんまに手のかかる奴ばっかりやわ。




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