出会いから日常へ

主人公視点

中学2年の冬。
先輩たちもとっくに引退して、陸上部のエースと言われるようになった私は、新人戦の200メートルで自己新記録を出した。
おまけに全国1位も取ってしまったので、しばらく学校中のネタになったのだが、そこから私の生活に変化が起きた。




『…オシタリ?』
『うん。今、優奈ちゃんのこと探しに教室まで来たで、忍足くん』
『オシタリ…。そっか、ありがと』



ジュースを買いに教室を出ている間に、オシタリという人が私のことを探しにきたらしい。

オシタリ…そんな名前の人私は知らない。もしも知り合いで、重要な用があるのなら、きっとメールでも来るだろうと思い、私はオシタリという人を放置したのが2月の初めだった。




『おつかれー』
『優奈おつかれ!今部室に忍足くん来たで』
『へ?』
『忍足くん。なんか優奈に用があるとかで』
『でた、オシタリ。誰やっちゅーねん』



授業が終わり、陸上部部室へ向かうと、チームメイトの口から出たのはまたオシタリという人だった。なんなんだろう、オシタリ。私なんかしたかな?


『ええなあ優奈、忍足くんと友達やったんや』
『うらやましー!忍足くん、カッコええよな』
『いや、影も形も見たことないけど』



どうやらオシタリという人はモテるらしい。それからも、オシタリという人は幾度となく私を訪ねてきたが、ひたすらすれ違いが続き、何度もクラスメイトやチームメイトから『また忍足くん来たで』と言われる日が続いた。


『オシタリ…何の用やろ。しつこいなあ』



ここまで何回も来られてるんだから、私から会いに行くべきなんだろうけど…。
私、オシタリって人のこと全く知らないし興味ないし。そのままいわゆる無視を決め込んでいたら、ついに彼と対面する日が来てしまったのが2月の終わりだった。



『コラァ桜井優奈ー!!』
『んー?…あんた誰?』
『忍足や!忍足謙也!顔合わせるまでに一ヶ月もかかるとかどないなってんねん!少しは自分から俺のこと探したりしてもええんちゃうんか!』
『ああ!オシタリくんね!最近部活で忙しかったからさ。用ってなに?大したことない用なら部活行きたいねんけど』
『どアホ!ここまで来てなに言うてんねん!ええか!今から俺と勝負しいや!』




そんなこんなでオシタリ、いや忍足謙也の用事とは、私と200メートルで勝負するという内容だったらしい。

もっと言うと、彼は自称浪速のスピードスターのテニス部員らしく、私にタイムで負けたことがものすごく納得いかないようだった。



『はあ、はあ…、な、なんでや…』
『よっしゃ勝った!』
『ありえへん…俺が女に負けるなんて…』
『ほな、私部活行くから!』
『待たんかい!もっかい勝負しいや!』



結局勝負に勝ったのだけど、忍足謙也は中々しつこく、それから毎日のように私に勝負を挑みに来て、いつのまにか春が来てしまったのだ。







「優奈おつかれさん」
「おつかれー。今日も練習頑張ろうな!」
「あんたほんまに元気やなあ。私なんて昨日の400の練習でヘロヘロやわ」
「そんな柔じゃないねん」


部室で着替えを済まし外へ出ると、遠くから「桜井ーーー!」と呼ばれる声がする。忍足だ。


「桜井!勝負やで!」
「ほんま懲りない奴やなあ、部活行きや」
「あほ!そんなんお前に勝ってからや!」
「はいはい、ほなグラウンドいこか」


それからグラウンドでいつもの勝負をし、私は見事勝利をおさめた。



これが私の、最近の日常




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