4月の問題児

白石視点

「ほんまごめんな」


そう断ると、彼女は「ありがとう」と行って去っていった。女の子に告白されて、断る。 もう何回目やろか。



「…ふふふ…見たわよ蔵りん!」
「この色男ー!」
「げっ小春にユウジ…なにしてんねん二人とも」
「そりゃあ蔵りんの告白現場の覗き見や!毎度毎度よく振るわねえ」
「もう俺らも三年やからなー。そら部活に専念したいで」
「罪な男や。なー小春」
「ねえユウくん」
「はあ、もうええから。それより謙也は?」
「謙也?ああ、あいつならいつものとこちゃう?」




中学3年春。俺らもついに最上級生。今年で部活も最後の年になった。

小春とユウジは相変わらずベタベタしっぱなしだし、俺は告白断りっぱなしだしで、一部では男テニはホモ部などと噂も上がってるらしい。いい迷惑だ。


しかし一番の問題は、忍足謙也である。









「クソーー!!また負けた!」
「あーええ気分!この爽快感たまらへんわ!」
「なんでや…なんで何回やっても勝てへんねん…!」
「そりゃあ努力と実力の差ってもんや」


謙也を探しにグラウンドへ出ると、案の定その姿はそこにあった。
肩で息をしている謙也と言い争ってるのは、陸上部のエースの桜井優奈。もうこの2人のこのやり取りも何十回とみている光景だ。




「おーい謙也!なにしてんねん部活始まるで」
「げっ、白石…!」
「どうせまた桜井に負けたんやろ、みっともないで」
「く…っ、まだまだやっちゅー話や!桜井!もっかい勝負や!」
「あほ、せやから部活やて」


桜井に勝負をふっかける謙也の服を掴み、桜井へと目をやった。


「すまんなあ桜井!また今度勝負したってや」
「ああ、白石やん。はよそいつ連れて帰ってや!勝負勝負うるさいねん」
「こら桜井!まだ勝負は終わってへんねんで!」
「はいはい行くで謙也」
「くそー!」




謙也がこんな風に桜井に勝負を申し込み始めたのは2年の冬あたりからだった。
桜井が新人戦の200メートルで全国1位を取り、一時期学校中その話題で持ちきりだった。

その記録が謙也の自己ベストを上回ってるとかで、謙也が騒ぎ始めたのもその頃だ。それ以来毎日のように桜井に勝負を申し込んでる謙也だけど…何度やっても200メートルは桜井に勝てないらしい。

スピードスターを自称している謙也にとって、女子に負けることがどうしても許せなかったらしく、いつまでも諦めずに陸上部へ通っているのだ。

「そろそろ諦めや謙也。桜井は女子やけど陸上の全国大会の常連やで?それに100メートルでは謙也の方が上なんやからええやんか」
「アホ!200も100も変わらへんわ!浪速のスピードスターとしても男としても、女に足で負けるなんてありえへん…!何としても勝たなあかんのや!」
「アホ、テニスしろや」



謙也がテニスに身が入ってないのも事実で、ちょっとした問題になっていた。部活中に陸上部の方乱入しに行くし、どうしたもんか。


「ケンヤー!遅いでえ!なにしてたん?」
「どーせまた優奈ちゃんに負けたんやろお?」
「あーもううるっさいわ!ほっとけアホ!ぜっったい明日こそ勝ってやる…!」
「謙也さん、テニスした方がええんちゃいます?」



財前の言うとおりだそのうち全国大会に向けての地区予選が始まる。謙也にはもっと本腰入れて練習してもらわないと困る。でもあの様子じゃまだ無理だろう。どうしたもんか。





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -