熱い視線

あの男の子と部活見学をした日から一週間。それからは彼と校内で会うこともなく、どうしてクラスや名前を聞かなかったんだろうと後悔した。

私はその後も中々部活が決まらず、結局名前だけの科学部に入部した。帰宅部希望の人たちが入る部活らしく、活動はほぼゼロ。おかげで楽しい部活ライフは無いし、部活友達もいない。おまけにクラスに友達はできないわで、私はブルーな学生生活を送っていた。


そしてある日の放課後。一人で下校しようとしていた私は、思いがけず通りかかったテニスコートで、あの時の彼を見つけたのだ。ああ、あの子テニス部に入ったのか…と思いながらしばらくテニスコートを眺めていた。


彼は、私と話した時、ものすごくつまらなそうな、希望のかけらも無い顔をしていたのを良く覚えている。だけど今は違った。先輩たちと楽しそうにしている彼の姿があった。
この間までは、私と同じ境遇で、すごく親近感が沸いたのに…なんとなく彼が遠い存在に思え、声をかけられなかった。







「財前光くんていうんや…」


その後、私はなんとか彼の名前を調べ、よく一人でテニス部の練習を遠くから眺めるようになった。財前君の楽しそうな顔が、頭に焼き付いて離れない。私はなにをしてるんだろう…友達もいない、部活もほぼいっていない、毎日一人でウジウジウジウジ…。



「……私、なんで科学部なんて入ったんやろ…」



財前くんの姿を見ているうちに、一つ決心がついた。科学部なんて退部してしまおう。そしてもう一度、自分に合った部活を探そう。それから数日後、私は科学部を退部して、新たに家庭部に入った。お裁縫をしたり、お料理をしたりするらしい。比較的お笑い要素の少ない部活だった。(だけどやっぱり、みんな明るい子ばっかり)

部活では友達もできた。隣のクラスの花ちゃんだ。彼女はとても明るくて、ウジウジの私をリードしてくれるとてもいい人だった。





それからも私は毎日のようにテニス部の練習を見に行った。財前くんの姿を見るとなぜか勇気が湧いてくるような気がして、私はひたすら財前くんに視線を送っていた。



しかし、私なんかの弱々しい視線に財前くんが気付くはずもなく。私が一方的に財前くんをみつめるだけで一年はあっという間に過ぎていった。



そして桜の花が咲くころ、私は中学二年生になった。


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bkm
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