人生で一番泣いた日
人生で一番泣いた日。


なんでそれが、財前くんとのデートの日なのか。さっきまでの幸せ気分はどこに行ったんだろう。



プルルルル


プルルルル



『もしもーし、優奈ー?』
「…っ、…ぐすっ、」
『ちょ、優奈、あんた泣いてんの?』
「……花ちゃ…」
『え、なんで!?…あんた今どこおんの?』
「家の、…っ、前…」
『うち花火のとこおるし、すぐいくわ!そこで待っときや!』



花火を見てるにもかかわらず、電話に出てくれた花ちゃん。さすが陸上部に借り出されるほどの足の速さで、五分としないで花ちゃんがやってきた。


「花ちゃん…!」
「うわっ、ちょ、なんやのその顔…!なにがあったん!?」
「…うあー…はなちゃん…っ」



花ちゃんの浴衣がベロベロになるくらいすがって泣いてしまった。
しばらくして落ち着いたとこで、さっきあったことを話すと、なんだかまた悲しくなって、涙が吹き出てきた。


「…じゃあ財前は、高野さんと先に約束してたってことなん?」
「…うんっ、…多分、私になんかお礼せなあかんて思ったんちゃうかな…。友達おらんから、この花火も見に行ったことないなんて話してしまったし…」




財前くん、やさしいから、きっと同情してくれたんだ。

…でも今日はその優しさの方が辛いよ。



「…あんたなあ、あの女の話、信じるん?」
「え…?」
「そもそもそれ、ほんまなん?」
「…わ、わからへん…」
「せやろ?」
「…でも、財前くん…多分私に同情してくれただけやし…」
「なんでそうなるねん、あんた、少しは前向きになって、ええなー思ってたけど、何も変わらんな」
「………」
「何も変わらんままで、ええの?」
「……私は…」



なんで、私、少しだけ前向きに、強くなれたんだっけ…。


初めて財前くんに会った一年の春、私と財前くんは同類だと思った。
だけど財前くんは違った。テニス部に入って、先輩たちと仲良くなって、生き生きしてて…。私なんかとは違った。

そんな財前くんをみたら、私も強くなりたいって思った。


科学部をやめて家庭部に入れたのも、財前くんと話せるようになったのも、料理をあげる仲になれたのも。


全部財前くんがそうさせてくれたんだった。



「私…泣いてる場合やない…。」
「優奈、」
「ごめん花ちゃん…私行くね…っ」




財前くんと高野さんが約束しちゃってたっててもいい。

同情されただけだとしても、別にいい

この気持ちをちゃんと伝えなきゃ、

泣くのはその後だ


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bkm
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