頑張りたい財前くん

『今日の花火行くのやめる!?』
「はい」



花火大会当日。昨日は流れに任せて桜井と一緒に花火を見に行く約束まで漕ぎ着けたのだけど、問題はこの後だった。

実はテニス部のアホ先輩らと一緒に行く約束をしていたのだ。


「なんでやの光ぅ!去年も一緒に見に行った仲やんかぁ!」
「小春先輩…腕にまとわりつかないでください。暑苦しいっす」
「来年も見にいこうなって言ったやんかー!この薄情者!」
「ユウジ先輩、声うるさ…」

まあこうなるだろうなあとは思ってたけど、きっとさらなる試練はここからだ。小春先輩や変態部長がニヤニヤし始めた。


「光う、もしかして、あの女の子と行くんちゃうの?」
「…」
「ええなあ、青春やなあ財前。」
「…」
「えっ!財前お前、女の子と行くんか!?なんちゅー生意気な…」
「ほら謙也、多分あの子とやで、いつも練習見に来てた…」
「うざ…」


途中からめんどくさくなり、早めに朝練を切り上げ教室へと向かった。あとは祭りで先輩らと会わなければいいのだ。そうすれば今日は乗り切れる。


「………」


…俺と桜井は、いつまでこんな関係なのだろうか…。いい加減どちらかがなんとかしないと、一生仲のいい友達で終わってしまう。


「今日はええタイミング、なんやろな…」


桜井のこととなると妙に弱虫になる俺。…いくらタイミングはよくても、俺の気持ちはまだ準備できていない。



「はあ…」
「おっはよー!財前!朝からため息ついてなんやねーん!」
「げ…朝倉…」


下駄箱でバシッと背中を叩かれた。朝倉花…俺の中では結構苦手なタイプの女だった。


「自分、声うるさいで」
「なんやねん、小さいよりマシやろ」
「耳触りや」
「なんて言い草や!ったく!」



…口は悪いし女らしさゼロだし、こいつが桜井と仲がいいのも不思議なくらいだ。



「…あ、財前」
「なんやねん」
「今日優奈と花火なんやって?」
「……」
「げへへへええなええなー」
「あほ、どこのオヤジやねん」
「まあまあ、しっかり頑張りやー」
「……なにがや」
「優奈も弱虫やけど、あんたも十分弱虫やな。」
「…!」
「ほな、応援してんで!」




…。
やっぱりあいつは苦手だ。アホなふりして全部分かってそうだ。一番タチが悪いかもしれない。


「ざ!ざざざ、財前!くん!!」
「おわっ、…びっくしたー…」
「ごっごめん、急に声かけて…!」


振り返るとそこには相変わらずあたふたした桜井がいた。噂をすればなんとやらで、かなり驚いてしまった。

「お、おはよう!」
「…おはよう」
「あっ、あの、財前、くん…」
「なに?」
「その…えっと…」
「……」
「今日の、ことなんやけど…」
「…ああ」


恥ずかしいのか、モジモジしながら俯く桜井の姿はちょっとかわいかった。


「今日は部活休みやから」
「えっ。そ、そうなん?」
「家帰ったらすぐお前んちいくわ」
「え…!い、いいの!?よ、よろしければ私が迎えに行きますけど…!」
「お前の家からの方が近いやろ」
「あ、そっか…」



ありがとう!と言って教室へ駆けて行った桜井からはなんだか花が飛んでいた。…一応、喜んではくれているらしい。脈は有る、気がする。


「あとは、俺次第、やな。 」


試合よりも緊張するかもしれない。


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bkm
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