久しぶりの
私の中の、財前くんが占める割合は結構大きかったらしい。なんて改めて思ったけど、きっと花ちゃんに言ったら「今さら?」と言われそうだ。


「はあ、まだ顔熱い…」


陸上部の練習を眺めながら、頬に手をやる。よく漫画なんかでは、頬染めてる女の子がよく出てくるけど、現実で赤面するなんて稀である。…自分でも顔が熱いのがわかる。こんなの初めてだ。

最近の私の行動の原動力はすべて財前くんだ。恐るべし財前くんパワー…



ヒヤっ


「ひょわ!!」
「なんやその声、ていうかなんでこんなひなたにおるん。倒れるで」


いきなり頬に感じた冷たさは、財前くんが私の頬に当てた冷たいペットボトルだった。そういえばさっきから妙に暑いと思ったら、真夏の炎天下の真下だったっけ…

財前くんは木陰に荷物を置き、そのペットボトルを口にした。財前くん…爽やかすぎて眩しい…


「…なにガン飛ばしとんの」
「えっ、べ、べつにガン飛ばしなんて…っ」


財前くんが眩しくて目を細めていると、逆にギロリと睨まれてしまった。財前くんはそのまま私を舐め回すように眺めていた。


「な、何…?」
「なんや肥えたな」
「うっ…あ、あんまり言わんといて」
「ま、どーせぐうたらしとったんやろ」
「ちゃうよ…!これには深いわけが…」
「なんやねん深いわけって」
「あー…えっと、…また今度話すね」
「なんやそれ」


財前くんの呆れたような視線が突き刺さる。でもまさか、あなたのために毎日ぜんざい作ってましたとは言えない。どんだけ暇なんだって思われそう…



「と、とにかく…学校始まるまでには元に戻すねんっ」
「どないして戻すねん」
「…お、おやつを、食べない…とか…」
「ほー。ほな、せっかく今から甘いもんでも食いに誘おうと思たけど、やめとくわ」
「え!?」
「おやつやめるんやろ」
「え…あ、えっと…」
「ぶっ」



「なんちゅう顔しとんの」と思いっきり吹き出す財前くん。ああ…またからかわれた…。だけどなんか財前くん嬉しそう。「アホやな」と毒を吐く財前くんは、普段みせないようなみスマイルだ。



「あんまり、からかわんといて…」
「別にからかってへん」


すると財前くんは荷物を持ち、正門の方へ向かって歩き出した。財前くん、きっとお疲れだから早く家に帰りたいだろうな。今日はいい日だった。財前くんに会えた上に、少しだけどおしゃべりもできて…。オマケにスマイルまで頂いてしまった…




「ほな、財前くん、今日はゆっくり休んでな」
「…は?」
「お疲れのところやったのに、引き止めてごめんね…。ほな、私せっかくやから花ちゃんでも眺めてから帰るな」
「…おい」


先ほどの極上スマイルとは一変し、今度はものすごく不機嫌オーラをまとった財前くん。え…私何かしちゃった…?!



「ざ…ざざざ財前くん…?」
「お前…ほんまのアホやな。甘いもん食いに行く言うてるやろ」
「へ?!ほ、ほんまに?からかっただけとちゃうの?」
「せやからからかってへん言うとるやろアホ」


財前くんはものすごく不機嫌のまま、「いくで」と正門を出て行ってしまった。

さっきの…からかってたんじゃなかったのか…。とりあえず私は不機嫌オーラ漂う財前くんの後を走って追った。


「ざ、財前くん!ほんまにいくん?」
「べつに嫌ならええで」
「ま、全く嫌やないねん!ほんまに嫌やないねん!嘘やないで!」
「わ、わかった」


必死に否定しすぎて財前くんが引いていた



「ほ、ほんまに嘘やないで」
「ええ加減わかったわ」
「ご、ごめん…」
「…ほな、いく?」


財前くんの不機嫌オーラがいつのまにか消えていて、さっきの極上スマイルはなかったけど、穏やかな顔の財前くんになっていた。


「…いく!」


どうしよう、なんだか顔がにやけそうだ。だってこれ、初めてのお出かけだよね!


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bkm
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