違う変化
主人公視点

部活をサボる。それがどういうことか、マネージャーの私には胸が痛くなるほどわかる。しかしこの際手段なんか選んでられない、なんとしてでも部活を休む方向に持っていかなくては


「あ、もしもし白石?」
「おはよーさん、桜井」
「あの…今日少しお腹が痛くて…」


ピンポーン



まさか…と思い玄関ドアを開けると只今私と通話中の白石がいた。なんでいるんだ…


「おはよーさん。腹痛いんやて?」
「え、あ…」
「俺胃腸薬なら持っとるけど」
「…支度します」


はあ、白石が目の前にいたんじゃ仕方ない。私はため息をつきながらしぶしぶ支度をし、玄関へ向かった



「桜井、朝飯ええの?」
「あ…うん。最近お腹空かなくて」
「三食食わへんと健康に悪いで?」
「うん…。あ、ほら早く行こうよ」
「せやな、ってうわ!遅刻やんか!」


時計を見ると集合五分前。夏休み中は好きな時間に来て好きな時間に帰っていいことになってたんだけど、跡部くんと忍足くんが来るということでいつも通り時間を決めて練習することになったのだ。


「ったく桜井がしぶってたからやで!」
「ゴメン」
「ほら、走るで!」
「え、ちょっと」



白石は私の腕を掴むと全速力で走り出した。ちょっとちょっと、足がもつれる、私が白石の速さについていけるわけないでしょ!

なんていう私の声も届かず、半分引きずられる形で学校へ向かった。コートに着いた頃にはもう体力ゼロ、息は切れきれで、なんだか気持ち悪くなっていた。


「きもちわる…」
「優奈ーー!おはよーさん!おそかったなー!」
「うっ、遠山くん…体揺らさないで…」


なんだか本格的に体調が悪くなった。くそ、白石め。憎しみを込めて白石を睨んでいたが私の視線もそうは届かず、かわりに一番見たくない者が目に入ってきた。



「げ、跡部くん…」
「よお優奈、ちゃんと来たようだな」
「はあ…」
「フン、逃げるかと思ったぜ」



そのつもりでしたけど…。あーあ。めんどくさいことになっちゃった。私はとにかく跡部くんに近づきたくなかったので、とにかく余計な仕事を探しては校舎の方へ行ったり部室へ行ったりしていた。




「小春ちゃん…カツラ洗いどきじゃない?私洗ってきてあげる」
「あ〜あかんあかん!これはな、絶妙なバランスでこの形整えとるんや。洗ったらあかんの」


「謙也、靴汚れてるよ。洗ってきてあげる」
「ちょ、なにすんねん!靴なかったら走れへんやろ」


「遠山くんお腹すいたよね。たこ焼き買いに行こっか」
「えっ優奈おごってくれるんか!?わーいわーい」
「コラ桜井!!」




「何してんねんさっきから」
「…仕事」
「アホ、邪魔しとるだけやないか。そないにコートにいたくないんか?」
「うん」
「はあ、しょーもないやつやな」




.

.



そういうわけで今日は部室の掃除をするように白石に言い渡された。よし、今日はもうここから出ないぞ。気合を入れて掃除しようとしたその時、



「優奈」
「げっ跡部くん」
「チッ、テメーは俺の名前呼ぶ時にやたら「げっ」とつけたがるな」
「あは…気のせいでは…あの何か」
「明後日、暇か?」
「え…はあ」
「出かけるぞ。朝迎えに行くから準備しとけよ」
「え、ちょっと」


なにその強制イベントみたいな誘い…行きたくない


「アーン?文句でもあんのか」
「おおありですけど…」
「…おい、ちょっと動くな」
「え」



跡部くんが私の方へ近寄ると、私の頭からなにかを取った



「ホコリついてるぞ。汚ねえな」
「掃除してましたから」



はっ



跡部くんと距離が近い。そういえば私この人とキス…したんだよな。あの時はなにも感じなかったけど…よく考えるとものすごく恥ずかしい



「…なに赤くなってんだよ」
「別に…あっちいって」
「…フン。お前、変わったな」
「それももう何回もいろんな人から言われました」
「ちげえよ。前よりもずっと、」



跡部くんは何かを言いかけたが、口を閉ざしてしまった。




「…前よりも、なに?」
「…なんでもねえ。明後日空けとけよ。じゃあな」




…変な跡部くん。まあ変なのは今に始まったことじゃないか。その日は無事に部活を終え、私はすぐに家に帰った。朝走ったせいかものすごく疲れたのだ。というか、やっぱり少し気持ち悪い。今日は早く寝よう。明日もまた部活があるんだから。


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bkm
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