もう一人の不幸者
謙也視点

それは全国大会後のある日。侑士からのメールが始まりやった。また東のルーキー情報かいな、とメールをみてみると珍しく違う内容で。


「お前んとこの優奈ちゃん、夏休み予定あるんか?」



…なんやこれ。なんで侑士が桜井の予定なんて知りたいねん。てか桜井の予定なんて知らんし。あいつのことやから旅行行ったり海行ったりなんていうアウトドア的な予定は無いはずやけど…。どう返信しようか迷っていると侑士から電話がかかってきた。



「侑士?」
『よ、謙也。メール見たか?』
「あーみたけど…なんやねんあれ」
『いやな、優奈ちゃん、夏休み何しとるかなあおもて』
「おま…あいつはやめとけ、いくら脚が綺麗でも、結構怖いんやで」
『アホ、それは謙也が邪魔くさいことばっかするからやろ』
「否めない…」
『ま、そういうことやし、優奈ちゃんに予定聞いてみてや。もちろん俺の名前は出したらあかんで』


侑士はそれだけいうと、電話を切ってしまった。なんやねんあいつ…ほんまに桜井のこと狙っとるんか?まあそれはいいとして、とりあえず桜井に予定聞いてみるか。


次の日の部活後、桜井に予定はあるかさらっと聞いてみたところ案の定無いと言っていた。そんなわけでその旨を侑士にメールすると、「わかった」とだけ返信が来た。なんやねんこいつは。ようわからんな。

しかし一晩考えて、ふと思った。侑士は人を使って好きな奴のこと探らせるような奴や無い。というか、一人でどんどんやっていく奴や。…まてよ、そういえば桜井のやつ、跡部からのメールがウザイとか、返事してへんとか言うとったな…まさか!



プルルルル


「おい侑士」
『なんやねん急に』
「お前もしかして今回の件、『あ』のつく奴が関わってるんとちゃうやろな」
『は?なんのこっちゃ』
「とぼけんな!お前が俺使って女の子のこと探るなんてなんか変やとおもたわ!」
『落ち着き謙也、大丈夫やから』
「なにがやねん」
『ほなまた連絡するわ』
「あ、おい!侑士ー!!」



あかん…もし俺が桜井の情報を跡部に流したとばれたら…!殺される!!





次の日

部活が終わり、みんなでラーメン食いに行こうとなった。ラーメン屋は学校のすぐ近くで、俺らも小さい頃からよく行っていたラーメン屋である。
フンフンと鼻歌を歌いながら荷物をまとめていると、また侑士から電話がかかってきた。



「なんやねんしつこい奴やな」
『つれへんなあ謙也。なあ、今どこおるん?』
「え?学校やけど…」
『もうすぐお盆やろ。今大阪に帰ってきてんねん』
「あーほんまに?今からいつものラーメン屋にいくとこやで。あの学校の近くの」
『ああ、あそこな。誰と行くん?』
「誰って…部活の奴らやで。」
『優奈ちゃんも?』
「ああ…って侑士おまえまさか!」
『おおきに。ほなまたな』




や、やばい…まさかまさかまさか。侑士と跡部、大阪におるんや無いやろな。あかん…脂汗でてきた…とりあえずラーメン屋へ向かい、二人の姿を探すべくキョロキョロしてみたが、まだラーメン屋にはいないようだった。注文すると、俺は侑士に連絡すべくトイレへ向かった。


「あ侑士?おまえ今どこおるねん…」



あかん、トイレ開けたら侑士と跡部にそっくりな奴おった…もう終わりや



「よ、こないだぶりやな謙也。今回はおおきにな」
「アホ!俺のこと騙しよって!優奈に怒られるの俺やで!」



その後とうとう跡部と優奈が顔を合わせてしまい、俺が情報をリークしていたことがばれてしまった。案の定俺は桜井に死ぬほど恨まれひどい扱いを受けた。ああもう最悪や。最悪の夏休みの始まりや。


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bkm
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