不憫な恋
財前視点

「優奈ー、帰るばい」
「うん。今日夕飯なにがいい?」


なんやねんこの会話。
千歳先輩と優奈先輩、仲はええなと思っとったけど、まさか同棲でもしとるんやろか…。しかもこんな会話を堂々と、どないなってんねん。
部活終わりの夕方、俺は一人悶々と考えていた。すると隣から部長と小春先輩の会話が耳に入ってきた。



「なあ小春……あの2人ついに同棲でも始めたんか?」
「はあん、もどかしいわあ!あの2人いつになったらくっつくん!?」
「落ち着け小春、まだあの2人が好き合ってるかすらわからへんねんで」
「でも聞いたやろ蔵りん、夕飯の献立まで共有する仲やねんで!」
「おかしいと思わへん?あまりに堂々としすぎやろ。あの2人、お互い好き合っとることに気がついてないんやないんか」



たしかに。部長の言うとおりや。あの2人は堂々としすぎとる。普通付き合いたてのバカップルってのは無駄に恥ずかしがったりほお染めたりするもんや。特に優奈先輩なんて、恋心に気がつくとは思えへん。

「俺もそう思いますわ」
「ひっ、財前!?お前いつから…」
「最初から聞いとりました」
「光、もしかしてあの2人のことなんか知っとるの?」
「そうじゃないですけど…見てたらなんとなくわかりますわ」



ま、見てても気付かん人もおるけどな。謙也さんとか謙也さんとか


「やっぱあやしいわよねえ、あの2人!」
「先輩らは何も聞いてへんのですか」
「全くや。それにしてもこの歳で同棲て…いろんな意味で問題あるで」
「優奈ちゃんはともかく…千歳ならなんか教えてくれるんとちゃう?」



というわけで、優奈先輩と楽しそうに話していた千歳先輩を引きずり呼んで尋問が始まった。


「千歳え、こういうのはな、ちゃんと周りにも言っといたほうがええで」
「は?」
「優奈ちゃんとどこまで進んどるん?あ〜〜もうはよ教えてえな〜〜!」
「ちょ、なんば言うとね?」
「率直に聞きますけど、優奈先輩と同棲しとるんすか」
『率直すぎるわアホ!』


部長と小春先輩から突っ込みが入ったけど、こういうのは率直にきかんとじれったいだけや。


「同棲?なんのこったい」
「最近優奈ちゃんと夕飯の話とかしとるやん!」
「千歳、隠したらあかんで!」
「ああ、今優奈のご両親が海外出張いっとるけんね、俺も優奈もお互い一人やし夕飯ば一緒に食べとるだけたい」
「「「海外出張…?」」」


なんやこの拍子抜け感。おもんないな


「なんや…そういうことやったんか…」
「でも千歳!ほんまは優奈ちゃんのこと好きだったり…なんてことないん!?」
「へ?」
「小春先輩…2人のことくっつけたいだけやないんすか…」
「あたりまえやないの!あんなええ雰囲気なのに…なあどうなん千歳」






「好いとうばい」





『え』
「優奈のこつ、好いとうばい」
「ほんまに?」
「ああ。ばってん、優奈は鈍かね。下手に手出したら嫌われるけん、様子見てるとこばい」
「ああ〜〜、てことは千歳の片思いやな!ええわあ〜〜」
「千歳、なんか手伝えることあったらなんでも言いや、協力するで」
「はは、ありがとさん」



そういうと千歳先輩はフラッと優奈先輩の元へ戻っていった。千歳先輩、ふびんやな…相手はあの優奈先輩や。一筋縄じゃいかんやろ。ま、俺はゆるく見守っとこか。


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bkm
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