隠しきれない想い
主人公視点

ゆっくりと目を開けると、そこは真っ白な世界。床も壁もカーテンも真っ白。ああ、ここは病院だ…。最近病院にお世話になることが多いなあ…



「お、目覚めたで」
「桜井!大丈夫か?」


そこには忍足くんと白石の姿があった。さっきまで跡部くんがいたはずなのに、どこに行ったんだろ…。ふと枕元に真っ赤な薔薇が見えた。ああ、やっぱりあの正装した跡部くん(赤い薔薇付)は夢じゃなかったんだ…。

ぐっと体に力を込めて起き上がろうとするが、全く動かない。


「ああ、動いたらあかんで優奈ちゃん。まだ安静にしときや」
「……白石、…忍足くん…」
「軽い栄養失調やて。…ほんまになにしとんねん」
「……ごめん」
「白石、とりあえず俺は跡部に優奈ちゃんが目覚めたこと伝えてくるわ」
「ああ、すまんな」


パタンと忍足くんがドアを閉めた途端、再びドアがガラッと開き、わらわらと四天宝寺の皆がなだれ込んできた



「優奈ーー!大丈夫なん??わい見舞いにたこ焼き買ってきたで!」
「あほ!金太郎!声がでかい!ここ病院やで!」
「謙也さんも十分でかいっすわ」
「優奈ちゃ〜〜ん!!なんで倒れたん!?大丈夫!?」
「桜井、これオサムちゃんから!コケシもろてきたで!」
「大事無いか、優奈はん」



なんと騒がしい…近くにいた看護師さんが「静かにしろ」とドスの効いた低音で注意してきた。まともなのは石田くんくらいである。


「優奈ちゃん、ほんまに大丈夫?」
「…………」
「うわっ桜井お前、手足鶏ガラ並みに細いな!」
「コラ一氏!なんちゅーデリカシーのない…」
「鶏ガラは良い過ぎッスけど、優奈先輩痩せましたね。毎日ジャージで会ってたから気が付かなかったですわ」


小声でも、皆が揃うとわいわいしてしまうのが四天宝寺である。すると白石が皆に「なんか甘いもん買ってきてや」とどこからかお金を渡して席を外させた。残ったのは小春ちゃんだけで、かなり病室が静かになった。


「で、桜井。なんでこないなことになったんや」
「ほんまやで、今日跡部くんが来なかったらどうなってたか…」
「……ごめん」
「お医者さん、軽い栄養失調とか言うてたけど、メシ食ってなかったん?」
「……うん」
「いつから?」
「……一週間…くらい」
「一週間!?なんでまた…」





「ごはん、食べると…千歳のこと思い出しちゃうから…」




ああ、もう隠しきれない



「一人で帰るのも、一人でご飯食べるのも、すごく嫌だった」



「そのたびに千歳に会いたいって思っちゃうから…」




この感情が、恋だということを


prev next

bkm
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -