主人公視点
「ほな、全国大会は三日後や!練習は明日まで、明後日は休養。全員試合に備えといてや」
白石の解散の声で部活は終了。いよいよ全国大会を三日後に控えて、みんな一層気合が入っている。一方私は昨日の跡部くんからのメールで気分が沈んでるところである。
『全国大会は三日後だ。試合を見に来い。特等席を用意しておいてやる』
別に特等席とかいらないんだけど…木の陰からこっそり見るからほっといてほしい。できれば顔合わせたくないし。
「はあ…」
「なんや桜井!ため息なんてつきよって!幸せ逃げるで〜!」
「一氏君、声でかい…」
「優奈ちゃん元気ないやん。どないしたの」
この二人には緊張感というものがないらしい。それが良さなんだけれど、やっぱり気が抜ける…。
「よっしゃ、今日アイスでも食って帰ろや」
「お、ええこというな白石!アイスアイス!」
「謙也さんガキみたいっすわ」
「なんやて財前!」
「優奈ちゃんもいくやろ?」
「私は…」
「優奈もいくやんな!」
いかない。といおうと思ったのに、遠山君が満面の笑顔で言うもんだから、仕方なく行くといってしまった。学校帰りにアイス食べに行くなんて初だ
「千歳もいくやろ?」
「ああ、学校帰りにアイスなんて初めてたい」
千歳も学校帰りにアイスなんてキャラじゃないよなあ。石田君はアイスとか苦手みたいで、さっさと帰ってしまった。私も帰りたい。
・
・
「俺チョコミント」
「わいはアイス10個重ねや!」
「金ちゃん、アイス落っことすばい」
「謙也さんはよ決めてください」
「あ〜〜めっちゃ迷う〜〜〜」
「優奈ちゃん何にするん?」
「バニラの一番小さいの」
「地味やな」
一氏君の言葉が地味にグサッと刺さった。アイスに地味も何もないっての。わいわい騒ぎながらアイスをほおばるみんなを眺めながらバニラアイスをちまちま食べていると、私の携帯が鳴った。
「桜井携帯なっとるで」
「優奈ちゃん誰から誰から??」
「…知らない番号だ」
誰だろう?と思いながら電話に出た瞬間、私は後悔した
『俺だ』
「どちらさまですか…」
『バーカ、俺だっつってんだろ』
ピッ
「え、優奈ちゃん切ってよかったん?」
「遠慮しなくていいっすよ」
「詐欺の電話だった」
「は?詐欺?」
携帯をしまおうとしたらまた着信音が鳴った。無視を決め込もうとすると、一氏君に携帯を取られてしまった。
「ちょっと!返して」
「オレオレ詐欺だったら俺に任せや!」
『おい、桜井!なんで切るんだよ』
「ん?なんやこの声、跡部やん」
だから無視しようと思ったのに!一氏君は「跡部からやで」と私に携帯を返してきた。なんて余計なお世話だ
「…はい」
『切ってんじゃねーよ』
「私の番号どこで手に入れたんですか」
『アーン?そんなこと知る必要ねえだろ?』
「おおありですよ」
『そんなことより、メール無視してるんじゃねえよ』
「ちょっと忙しくて…」
『試合を見に来い。命令だ。わかったな』
「だからいかないって…って、あれ?」
通話が切れている。なんて自己中なやつなんだ!!絶対試合見に行くのやめよう
「桜井、跡部君なんやって?」
「しらない」
「ええな〜優奈ちゃん愛されとるんやな〜ステキ〜」
何言ってるの小春ちゃん。やめてくれ。今なら迷惑罪で跡部くんを訴えられる気がする。