主人公視点
「優奈のモテ期も落ち着いたね」
昼休み、ポソっとつぶやいた友子。そういえば最近呼び出されることもなくなって来たな。あのときの怒涛の告白ラッシュは何だったのだろうか
「ちょっとさみしいんじゃないの?」
「何言ってんの」
大体、告白なんて人生に1,2回受ければいいようなものだ。あんなに連続されると断るのも雑になってしまう。また平穏な日々に戻ったんだなとしみじみしながら、放課後、部室へ向かっていると、廊下の陰から「優奈ちゃ〜〜〜ん!!」と小春ちゃんが飛び出してきた。
「あ、おつかれ」
「相変わらずのポーカーフェイスねぇ。もっと驚いでもええのに。それはそうと優奈ちゃん!!」
「な、何?」
「千歳と付き合っとるん?」
ん?小春ちゃん…今なんと…?
「はい?」
「せやから、千歳と付き合ってるん?」
「付き合ってないけど…」
「ほんまに?今結構噂になっとるんやで」
「噂って…私と千歳が付き合ってるって?」
「せや。最近告白されなくなってきてへん?それ、その噂のせいやで」
…てことは、私は千歳と付き合っていると勘違いされて、告白してくる人も減ったってこと?おかしな噂が立ってるのはまずいけど、この平穏は千歳がもたらしてくれたのか。
「千歳も役に立つんだ…」
「何言うてんの」
「別に。とにかくその噂嘘だから。そう言いふらしておいて」
その日の部活で、私は小春ちゃんがしてきた質問と同じ質問を一氏君やら白石やら、おまけに謙也からもされた。面倒くさい。千歳も色々聞かれてるのかな。千歳にも悪いことをしてしまった。私のせいで変な噂が立ってしまったのだから。
「優奈〜」
「あ、千歳」
「もう仕事終わったと?」
「うん、今日誌書き終わったところ」
「じゃ、一緒に帰るばい」
「…………」
千歳の誘いに少し戸惑った。千歳…噂のこと聞いてないのかな
「…優奈?いかんの?」
「…千歳、噂のこと聞いた?」
「ああ、聞いたばい」
「私一人で帰るから」
「…帰らんと?」
「だって変な噂たてられて嫌でしょ」
「別に」
え?
グイっ
気づいたら、千歳に腕をつかまれて正門の外まで連れていかれた。おお、大勢の人が見ている。また変な噂たつよ?
「千歳?」
「俺はいっちょん気にしとらんばい」
「え…」
「それに、優奈の虫よけにもなっとるんじゃなか?」
虫よけ…って、男避け、ってこと?まあ確かにその辺は助かっているけど…。
「…ほんとに嫌じゃないの?」
「嫌じゃなかよ」
「…そっか。じゃ、帰ろっか」
「ん。」
千歳…もしかして私のために虫よけ(良い方悪くてごめんなさい)になってくれてたのか…。ありがたい。千歳もなかなかいいところあるじゃないか。
それからほぼ毎日、千歳と帰るようになった。いろんな人に付き合ってるのかと聞かれたけど、「方向が一緒だから」と理由にならない理由で返事を返していった。
「ほー、千歳が桜井の男避けなあ」
「優奈…アンタええなあ、イケメンばっかに囲まれて」
「千歳なんて横におるだけで虫よけになりそうやしな」
とある日の昼休み、私の席に群がる謙也と友子と白石。彼らにも千歳と付き合ってないと言いふらしておいてと頼んだので、「千歳君と付き合ってるの?」と聞かれることも減ってきた。
それはいいとして、部活の方は府大会、近畿大会をサクサク勝ち進み、ついに全国大会出場が決定した。最近は遠山君が「コシマエ」という謎のワードを口にしている姿をよく見る。選手の名前かな?とにかく全国大会までもう少し、頑張らなくては。