また発見
主人公視点

それから、千歳と帰ることが多くなった。ほとんどが千歳から帰ろうと誘ってくる。そして理由はいつも「方向が一緒だから」だ。だからそれは理由にならないだろう。
千歳とは他愛のない話をしたり、お互い無言で帰るときもあった。だけどそれが気まずくならないところが不思議だなと思った。


そして、もう一つ新たに発見したこと。
千歳はたぶん、右目が見えていない。



前は私が斜め後ろを歩く感じだったけど、最近は横に並んで歩いている。気が付くと千歳はいつも私の右隣にいる。時々私が千歳の右隣にいると、さりげなく私の右隣へ移動してくる。

最初は人の右隣にいるのが好きなのかなと思ってたけど、右後ろからくる自転車や人への反応が遅い。きっと見えにくいからだと思う。



「今日は蒸し暑かねえ」
「もうすぐ梅雨だから湿気があるね」


だけど私は気づいていないフリをしている。本人も目の話は一切してこないので、知ってほしくないのかもしれないし。




ポツ





「あ…」
「雨ばい。優奈、あそこ」


私と千歳は近くのパン屋さんの軒先で雨宿りをした。一時的な雨だと思うけど…傘あったっけ…


「早く止むとよかねえ」
「…あ、あった」
「あ、折り畳み傘」
「…一つしかないけど、…一緒に使う?」



あ、これはいわゆる相合傘というやつだ。でも致し方ない。小さな折り畳み傘に2人で入っていくことにした。傘は背の高い千歳が持つことになった。それにしても止みそうにない雨だ。ていうか激しくなってるような



「優奈濡れてなか?」
「うん。大丈夫」
「嘘つきたい。肩濡れとる」


千歳はすっと傘を私の方へ寄せてくれた。そうすると千歳の肩が―――となるとキリがないので「ごめん」といって大人しく厚意に甘えた。



ブロロ…



後ろから大きなトラックが来た。あ、大きな水たまりがもうできている。よけないとたぶん水がかかってしまう。「千歳」と呼びクイっとをつかんだが、トラックが右側の死角に入ってしまい千歳の反応が遅れた。思わず私は千歳の右側に飛び出してしまった




バシャッ



「……………」
「…え、優奈!?何ばしよっと!?」




思った以上に水が飛んできた。全身びしょぬれである。千歳は私をまた近くのお店の軒先へ寄せて、カバンから取り出したタオルでわしゃわしゃと私の頭を拭きだした



「うわ〜、びしょぬればいね、何でわざわざ自分からかかりに行ったと?」
「………」



だって、きっと千歳見えてなかったから避けられないと思って



とは言えずうつむいていると、千歳は私の頭を拭く手を止めた




「…もしかして、気づいとったと?」
「え…」
「俺の目ば見えてないこつ」
「………うん」
「そっか、すまん。気使わせたばいね」

千歳はそれだけ言うとまた私の頭をゴシゴシ拭きだした。


「俺は濡れたって全然かまわんばい」
「…だって…」
「優奈が濡れる方が困るたい。」
「…ちょっと、力強い、イタイ」

ゴシゴシ私の頭を拭く千歳。千歳がそれ以上何も言わないところを見ると、何か理由があるのかもしれない。本人が言ってこない限り詮索しない方がいいと思うけど、このこと白石に伝えといたほうがいいのかな、と頭の片隅で思った。



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bkm
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