主人公視点
「優奈、今日も部活やんな」
「うん」
「さすがテニス部、今年も全国大会いくんやろなあ」
「多分ね。」
「それまで優奈も忙しそやな」
「…そうだねわたしも頑張らなきゃ…」
ピピピ
「お、最近ほんまによくメールくるなあ」
「…………」
「なあ、相手誰なん?」
「…部活行ってくる」
「あ、優奈!もー、教えてやー」
メアド変えようかな、と思うほど跡部君からのメールがうざい。ほんとに毎日毎日よくも懲りずに送ってくるな。ムシムシ。
イラつきながら部室へ向かっていると、前から巨大なやつの姿が見えた。
「千歳」
「優奈、おつかれさん」
「…そっち、部室と反対方向」
「はは、優奈には適わなかね〜」
千歳は方向転換し、私の隣を歩き出した。コイツまたさぼろうとしてたな。どうしようもないやつだな。
「いつもどこへ行ってるの」
「ん?べつに、ブラブラしてるだけばい」
「へえ」
「あ、」
「…?」
「今日、一緒に帰るばい」
「へ」
「方向一緒なんやし、よかろ?」
「え、うん」
まあ確かにそうだけど。方向一緒だから帰ろうってそれ理由にならないと思うけど。
あれ?それって2人で帰るってこと?それともまたみんなと途中まで帰って、そのあと2人で帰るってこと?んん…どっちだ
色々考えていたら部室についてしまい、部活が始まってしまい、そしてどっちなのか千歳にも聞けず、部活も終わってしまった。
「白石」
「ん?なんや?」
「あの…」
今日って一緒に帰るの?ってそんな質問する人いるかな?中々いい言葉が出てこないでいると、白石は「変な桜井」とか言って行ってしまった。そういえば謙也も今日は用事があるとかでさっさと帰ってしまったし、やっぱり…
「優奈、支度終わったと?」
「へ、うん」
「ん。じゃ、いくばい」
あ、本当に二人で帰るんだ。驚きつつ、千歳の斜め後ろを歩きながらついていく。千歳の奴、本当にでかいな、なんて思いながら歩いていると、また携帯が鳴った。跡部だ。
「…………」
「優奈?眉間のシワがすごかよ」
「…うん」
「メール?誰からね?」
「……跡部君」
毎日のように来るんだよね、とぼやいていると、手元から携帯が離れた。ああ、千歳が取ったのか。って、何取ってんだ人の携帯
「ちょっと、何してるの」
「ほい、終わったばい」
「なにが」
まさか変なことしてないよね?携帯を見てみると、げっ。跡部君に返信してある!勝手なことを!しかもなにこれ…
『うるさいしね』
何送ってるんだコイツは…!!
「千歳!!」
「そげんくらいはっきり言わんと伝わらんたい」
「言い方ってのがあるでしょ」
「…………」
あれ、黙っちゃった。千歳の顔をのぞき込むと、なんだか拗ねた子供のような顔をしていた。
「…俺、優奈の連絡先知らんばい…。」
何それ。
「千歳も私に迷惑メール送る気?」
「なっ、送らんばい!」
「……交換、する?」
「する」
千歳とフルフルして連絡交換をすると、私の連絡帳に「千歳千里」と追加された。
「ありがとさん。メール送るばい!」
「迷惑メールはやめてってば」
「俺のメールは跡部とはちがかよ!」
「…うーん、」
千歳と向き合いながらあーだこーだ言ってると、通りがかりのおばさんがクスクス笑っていた。
「仲良しやねえ。いいねえ」
そういいながらおばさんは行ってしまった。仲良しって…私と千歳が?
「カップルと間違えられたばいね」
「…私と千歳が?」
「そ。身長差も優奈ならちょうどよかたい」
…確かに。私の身長だと、隣にならんでも同じくらいの身長の男子がほとんどだ。背の高い白石でさえ、ヒールをはいたら追い抜かしてしまう。
「優奈の身長じゃ、ヒールは履けんばいね」
「千歳も標準サイズの女の子じゃ、潰しちゃうかもね」
珍しく千歳と笑いあった。