挙動不審
主人公視点

次の日の不動峰との試合は四天宝寺が全勝し、見事私たちは準決勝へと駒を進めた。…そこまではいい。だけど渡邊先生から千歳が退部したと聞かされた時は、一瞬新手の冗談かと思った。


「何考えてんねん、あいつ…。準決勝どないすんねん」
「まあまあ蔵りん落ち着いて」
「ほんまにフリーダムなやつやな」


一氏君の言うとおりである。フリーダムすぎるだろう。それにしても皆の反応もさすが四天宝寺というべきなのか、白石がやや焦り気味なものの、皆さほど動揺もせず相変わらずラウンジで談笑していた。まあ、暗くなるよりも明るくいたほうがいいもんね。みんなのいいところだ。


それにしても、千歳…ホテルにも戻ってないのか。いったいどこで何してるんだろう…



ウロウロウロ


ウロウロウロ



「優奈ちゃん、さっきからウロウロしすぎやで」
「え」
「落ち着かない奴っちゃなあ。おとなしくここ座ってろや」
「うん」



小春ちゃんと一氏君がぽんぽんとソファをたたいたので、私は空いているところに座った。皆はババぬきでもりあがっていたようで、私も途中から入れてもらった。



「………」
「………」
「………」
「ああもう、桜井!はよひかんかい!」
「え、あ、うん」



しまった、ぼーっとしてて謙也のカードを引き忘れていた。珍しく謙也に怒られた。彼はどうやら待たされるのが嫌いらしい。




「優奈ー、さっきから何きょろきょろしとるん?おもろいもんでもあるんか?」
「えっ」



遠山君が顔をのぞき込んできた。わ、びっくり。



「きょろきょろ…してた?」
「さっきからめっちゃしとるでえ!」



…自分でも自分が良く分からない。無意識のうちにやっていたらしい



「優奈、今日は金ちゃん以上に落ち着きないなあ」
「正座でもして、静かに目を閉ざすと心が落ち着くで」



まるでお寺の住職のセリフかのような石田君のお言葉を受けて、正座してみたが1分もしないうちに足がしびれてしまい、「なにしとんねん」と白石から白い目で見られてしまった。



「私、今日はもう寝るね」



私の行動がおかしかったからか、皆に心配されながら部屋へ戻った。
千歳…。どこに行ったんだろう。またいつもみたいにどこかへフラッと出かけてしまったのだろうか。部屋に戻ると、先ほどの騒がしさから一転してしんと静まり返った室内に少しだけ寂しく感じた。




千歳…準決勝見に来るよね…




「ってなんで千歳のことばっかり考えてるんだ」



と、珍しく自分にツッコミを入れつつ、先ほどの石田くんの言ったように、ベッドの上で正座をして心を鎮めた。


すーはー…



「…私、変なの…」



明日は大切な準決勝。マネージャーの私がこんなに心乱しててどうするんだ。
しばらく正座しながら深呼吸をして心を鎮めていたが、1分もしないうちに足がしびれて断念した。

その日はなかなか寝付けなくて、何度も廊下を歩いたり、外へ出たりしてしまった。心の隅で千歳に会えるかも、なんて思っていたりしていたが、その日千歳の姿を見ることはなく、寝不足で準決勝を迎えてしまった。



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bkm
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