変化
主人公視点

怒涛の合宿が終わって一週間。私たち四天宝寺テニス部は地区予選に向け、また普段通りの学校生活を送っていた。しかし、私の生活にはいくつか変化したことがある。



ピピピ…


「…優奈。メールきとるで」
「……………」


ピピピ…


「…見なくてええの?」
「……………」



合宿終了後から、わたしの携帯には他校の人たちからやたらメールが来るようになった。立海の切原君や丸井君、氷帝の跡部君や忍足君、青学の桃城君等から「登録よろしく」的なメールが続いた後、毎日のように跡部君からメールが来ているのである。元々私は人とメールする方じゃないから、気が向いたときにだけ一言程度の返信はしている。それにしても私のアドレスはどこから流出したんだろう…。あと跡部君メール送りすぎだろ。迷惑メールか



「ははん。男やな」
「………」
「なあ誰?どこで捕まえたん?」
「友子、うるさい」



友子はこの手の話に興味津々だ。絶対にややこしくなるから知らんぷりしとこう。



「桜井ー、これ部活の予定表やけどー…って、なんやねんその顔」
「白石…」
「あ、あれやろ。跡部君からのメール。まだ来てるんかいな」
「白石!跡部君て誰?優奈に聞いても教えてくれへんねん」
「私先に部室いくから…」


白石の手にあった予定表を取り上げて教室を出ようとすると、遠くの席から「桜井さん、バイバイ」と声がかかった。
そう、私は最近、友子以外の友達がちらほらでき始めたのである。



「…バイバイ」
「あっ今桜井さん笑ったよ」
「ホントだ。かわいー」
「………」


半分見世物になってる気もしなくはないが、喜ばしいことである。この私に友達ができ始めているんだから!そんな私を横目に友子は「ちょっと寂しいな」と漏らしていた。悪い気はしない。そして…



「桜井さん」
「…………?、だれ?」
「あの、俺隣のクラスの山内だけど…ちょっといいかな」
「え…あ、はい」





生まれて15年。ついに私にモテ期が来てしまったらしい…。今週で呼び出されるのは三回目。本当になにがどうなってこうなったんだ。天変地異でも起こるんじゃないか。隣のクラスの…君のあとをついていき、(しまった、名前わすれた)告白の定番の裏庭へと出た。当然のごとく「好きなんだけど」と伝えられたが丁重にお断りした。だって私恋とかしたことないし。好きって感覚よくわからないし…




「…なんか、あんまりいい気分じゃないな…」



自分に好意を持ってくれた人に「ごめんなさい」というのは中々きついものがある。だけど同情して付き合うものでもないし、こればかりは仕方ない




しんみりしながら部室へ行くと、もう呼び出しの噂を聞きつけたのか、小春ちゃんが嬉しそうに私を出迎えた。



「優奈ちゃん!!!今日は誰やったの!?」
「………山内君?だっけかな。隣のクラスの」
「や、山内君!?あのバスケ部の!?めっちゃイケメンやないの!」
「………う、うん、そう?」
「で、返事は!?」
「断った」
「だああああ勿体ない!!優奈ちゃん、勿体なさすぎやで…!」



この会話、もう今週で三回目だよ…。デジャヴだ。



「小春、はよ着替えや。部活送れるで」
「蔵リン、うち優奈ちゃんがうらやましいねん」
「羨んでもどうもならんやろ」
「小春、俺がおるやんか」
「うるさいわ一氏」


この光景ももう3回目である。みんな同じ日を繰り返しているんじゃないかってほど同じような会話をしている。贅沢な話かもしれないけど、もう告白とかやめてほしいなあ…。


ガチャ


「おっ千歳やん。今日はえらい早いな」
「…………んー」


せっかく話しかけてあげた謙也を無視し、心あらずな状態が続いているのが千歳である。無視された謙也やちょっとしょげている。おもしろい。



「なんや千歳え、辛気臭いで!小春との漫才で笑かしたろか?」
「…いや、いらんばい。」



バチっ


げ、千歳と目があってしまった。




「……優奈…また告白されたと?」
「え…あ、うん。」
「断った?」
「うん」
「ほー」



なんだこの千歳は。自分から聞いといてその気の抜けた返事はなんなんだ。



「よし!みんな揃ったな。合宿も終わって今週から地区予選が始まる。全員気ぬいたらあかんで!」


白石の声に、みんなも一層意気込む。これで本当に最後の夏だ。わたしもできることをがんばろう。




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bkm
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