主人公視点
『優奈』
…でかい男が見える。これは…あ、千歳だ
なんか近くない?1メートル以内に入るなって言ったのに…
『ちょ…千歳、』
「近いってば!!!」
…あれ…目を覚ますとそこはホテルの部屋で。目の前には白石やら謙也やら、皆が集まっていた。
「なにが近いねん」
「優奈ちゃん寝ぼけててかわええわ〜」
「ゆ…夢…」
夢でまで私を苦しませるとは…さすが千歳…
「優奈、気分はよかと?」
「ぎゃっ」
ボスッ
思わず私は枕で千歳の顔面を叩いてしまった。
「いたか〜…なんね優奈!」
「べ、別に」
「何してんねん2人とも。それより桜井、お前に話があるやつがおるんやて」
「え…」
白石の後ろから現れたのは…
「あ、遠山君」
「優奈…ほんまごめんな」
白石にこってり怒られたのか、遠山君はものすごく申し訳なさそうに謝ってきた。
「うん。いいよ」
「えっ。許してくれるんか?」
「うん」
「…!おおきに優奈!」
「わっ、ちょっと」
遠山君は満面の笑顔で私のベッドへ飛びついてきた。あったら叱ってやろうと思っていたのに、どうしても遠山君の顔を見ると、怒ることができない。
「桜井のやつ、なんで金ちゃんには甘いんや!」
「なんや謙也、優奈ちゃんに優しくされたいん?」
「なっ、ちゃうわアホッ」
「謙也はいつも優奈からの風当り強いもんなあ」
皆がわいわいにぎやかにしてる一方、私は何か忘れているような気がして気になって仕方がなかった。なんだっけ…
ピピピ
「ん?誰かの携帯鳴ってるで」
「あ…私かも…」
カバンから携帯を取り出すと、なんとまあそこには跡部君からの着信が20件くらい続いていて、そういえば試合を見に来いと言われていたことを思い出した。
「わ…忘れてた…」
「うわっなんやその着信履歴。」
「全部跡部君からやん、優奈ちゃんほんま愛されてるわねえ」
一氏君と小春ちゃんが私の携帯をのぞき込み、そのまま皆へ回されてしまった。だから、ここまでくると本当に迷惑だ。愛されてるとかそんな次元ではない。
「…………」
「(げ、)」
ああ、また千歳がむくれている。もうどうしてこんなに気苦労が絶えないんだろうか
「ま、終わったことは仕方ないやん。もう夜やし、はよ晩飯食いにいこや」
仕切り直しに白石が手をたたき、皆で食堂へ行くことになった。わたしの体調はといえば、まあフラフラはしなくなったものの、あまり食欲がわかない。小春ちゃんが「お腹にもの入れたほうがええで」と言っていたので軽いものでも食べようと思った。
「…優奈、もう歩けると?」
「うん、大丈夫」
「遠慮せんで、いつでも肩かすばい」
「あ、1メートル」
「えっそれまだ続いとったと?」
「当然」
「…二人とも、仲いいわねえ」
小春ちゃんの一言に、ピタっと固まる私と千歳
「あたりまえばい」
「…特に仲は良くないけど」
「ちょ、優奈ひどかあ」
とにかく試合が始まるまでにしっかり体調を元に戻さなくちゃ。そのためにも、千歳には悪いけど、少し離れてもらおう。