不思議な食卓
主人公視点


いつも通りの我が家。いつも通りのお母さん。そして唯一違うのは、家の中に巨大な男がいること。


「どーぞ、めしあがれっ」
「いただきます」
「いただきます…」




なんで私はお母さんと千歳で食卓を囲っているのだろうか。意味が分からない。


「お父さんね、今日飲み会なんだって。言うのが遅いのよね、材料買った後に連絡よこすんだもの」
「へー…」
「この煮物うまかー」
「でしょでしょ!優奈も食べなさい」
「…食べてるよ」


お母さん…すっかりご機嫌だなあ。もうこうなったら仕方ない。大人しくゴハンを食べよう

「千歳君は九州の方言なのね〜。」
「熊本出身です」
「あら〜男らしくていいわね〜。大阪にはご家族で?」
「いえ、家族は熊本で俺は寮生活しとります」
「一人なの?それじゃあさみしいでしょう」
「もう慣れました」
「あらあら、一人に慣れるなんていいことじゃないのよ、家も近いんだしいつでもご飯食べにきてね」
「はは、ありがとうございます」


…そうだよね。一人に慣れるなんて、あんまり良くないよね。私も自分の一人暮らしを想像するとゾっとする。今以上口数と表情がなくなって、そのうち化石になるんじゃないかと思った。

それからは楽しく食事をし(といってもお母さんがペラペラ話しているだけ)時間も遅くなったのでそろそろ千歳は帰るらしい。「また来てね」と連呼する母を横目に千歳を見送りに外へ出た。



「…今日はごめん、ややこしいことになって」
「久々に人と食事して楽しかったばい」
「……お母さん、うれしかったんだと思う。私の友達一人も見たことなかったから」
「ハハ、そりゃあ嬉しかね」


友子は学校ではよくしゃべるけど、一緒に遊びに行くような感じじゃないし。まあ、千歳が私の友達かどうかは疑わしいけど…。千歳の姿が見えなくなるまで見送って、私は部屋で一息ついた。千歳もさっきの機嫌の悪さも無くなったようだったし、とりあえずよかったな。



「いいわね〜千歳君。かっこいいわあ〜」
「何言ってるのお母さん」
「本当に彼氏じゃないの?」
「部活仲間だってば」
「残念。でも優奈、最近少し明るくなったわねえ」
「え?」
「前より表情も豊かになってきたし、口数も多くなった気がするし、お母さんうれしいわ」



お母さんはご機嫌で、鼻歌を歌いながら部屋へ戻っていった。
今日はツイてない一日だったけど、結果オーライである。


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bkm
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