感じない彼女
主人公視点


「優奈〜〜〜やっぱりもっかい消毒ばすっと?」
「…千歳、うるさいんだけど」


帰り道のバス。とにかく千歳がうるさい。お願いだから寝かせてくれ…


「はあ…ほんまに素敵やったわ…優奈ちゃんと跡部クンのキスシーン…きゃああウチもあんな風にキスされたいっ」
「小春のドアホ、あんなナルシストのどこがええねん!なあ謙也」
「エッ、あ、そそそそそやな」



小春ちゃんはあの調子だし、一氏は拗ねて不機嫌だし、純情謙也は照れて仕方がない。みんな本当に静かにしてほしい。


「にしても桜井、えらい平然としとるな。」
「もしかして優奈ちゃん、もうファーストキッスは体験済みなの!?」
「ほ、ほんなこつね!?」
「…いや、さっきのが初めてだけど…」
「あかんなあ桜井。そういうときは恥じらったり頬染めたりしといた方が得するで?」


一氏が偉そうにアドバイスしてきたが、恥じらったり頬染めたりだなんて私には無理だ。まあ別の意味の恥じらいはさっき思いっきり味わったけど…



「…なんにも感じないから、なんてリアクションしたらいいのか、わからない」




…あれ、私変なこと言った…?みんな一斉に黙ってしまった。


「あ…跡部の奴…不憫やなあ…」
「…だ、大丈夫や優奈ちゃん!ワタシが恋愛のテクニックを教えてあげる!」
「なんなら俺が練習相手になるばい!」
「…あーもう、うるさいなあ…」



恋とか好きとか、私にそんな感情が芽生えるのなんて、きっと何十年も先の話だろう。もしかしたら晩年になってやっとなんてこともあるかもしれない。縁側で、同じ年くらいのおじいさんとお茶を飲む自分の姿を想像して、バカバカしいと思い私は眠りについた。


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bkm
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