錆び付いた扉を開けると、春の風が吹いて心地よかった。屋上は本当は立ち入り禁止なんだけど、前にこっそり鍵を拝借して合鍵を作ったのだ。
屋上はいわば、砂漠の中のオアシスのような存在である。
「…いい天気…」
ぐっと背伸びをするとすこし立ちくらみがした。くらくらと、あれ、結構くらくらきたな、やばい、後ろに倒れる……!
ぽすっ
「……?」
あれ、倒れて、ない?
かわりに何か大きなものにぶつかった。一体何…
「大丈夫と?」
振り返ると、
ぬっと現れた巨大な男。
誰だこの人は
「…、大丈夫、です。」
「…いい天気やねー」
「………はあ、」
なんとなくだけど、この人は超マイペースな人なんだと感じた。一番めんどくさいやつだ。
なんで私のオアシスにいるんだろう、こいつも合鍵作ったのかな…
なんだか自分の島を荒らされたような気分になった。せっかくいい天気で気持ちよかったのに。
…帰ろう。
「どこいくと?」
「…別に」
扉から出て行こうとした時、巨大な男から呼び止められたが、振り返らずに屋上を後にした。