主人公視点
唯一の友達とも言える友子に出会ったのは二年生の春。わたしはそれまでほぼ7年間友達ゼロ生活を送ってきた。その7年間は伊達ではなかったらしく、なんだかんだわたしはたくましい女なのである。
「ええ怒鳴りっぷりやったなー桜井!さすがは大阪の女やっちゅー話や」
「あほやなあ謙也!優奈ちゃんは元東京都民やで〜」
「優奈、怖かったばい」
「結構キレもあったし、漫才とかもできるんとちゃう?」
「うるさい」
合宿二日目の夕方。夕食の席でわたしは四天宝寺軍団にいじられ続けていた。それにしても本当に最悪な日だ!跡部君に怒鳴ってしまったせいで、真田君には「桜井!いい声だな!」と言われ、不二君には「へえ、優奈そんな声出たんだね」とか言われ、忍足君や氷帝軍団には「跡部に怒鳴るなんてすげー女…」とかなんとか言われ本当に散々だった。おまけに目の前の謙也たちは私のことを笑ってくるのだ
「お前ら静かに食べや。桜井に怒られるで」
「白石、うるさいんだけど」
ギロッと睨むと白石はすくみあがった。
全く昨日の桜井を助け隊とかは何だったんだ…。
もぐもぐと夕食のししゃもを頬張っていると、隣の席から視線が痛い。ふと見ると、あ、跡部君と目が合ってしまった
ふいっ
「な……」
目を逸らされた!なんて男らしくないんだ。もういいや放っておこうと食事の続きをしていると跡部君は早々と食べ終わったのか部屋へ戻っていった。
「どないすんねん桜井、跡部のやつ相当怒っとるで」
「私悪いことしてないもん」
「せやなあ…」
面倒見がいいのか、白石は私よりも私と跡部君の仲のことを気にしていた。なんていうか、やっぱり私、人と問題起こし過ぎだよな…
ごめんなさい、と心の中で無意味に白石に謝っていると、氷帝の忍足君と向日君が私の方へ近寄ってきた。
「今日はすまんなあ、優奈ちゃん」
「おまえ、すっげーな!跡部に怒鳴ってる女初めて見たぜ!」
「はあ……」
「ま、跡部のことは気にせんで。いつも俺様やから」
「元々気にしてないから大丈夫」
「ははっおまえおもしれーな」
ケラケラ笑う向日君。みんななぜ笑うんだ。そんなに跡部君に怒鳴ることはレアなのか?
「ごちそうさま…」
「もうええの?優奈ちゃん」
「うん、早めにお風呂はいってくる」
「優奈!俺も行くばい!」
「変態千歳」
今日は疲れた。早くお風呂であったまって、早く寝よう。