謙也視点
この一晩で、色々と衝撃的な事実が発覚して俺は少し戸惑っていた。まず一つ目は、桜井の性格。ぶっちゃけ、あいつのこと無愛想で無表情って言い出したのは俺やった。
一ヶ月遅れで入部してきた桜井に簡単にマネージャーの仕事を教える役目を言い渡されたことがあった。その時が桜井との初対面で、とにかく喋らないわ何考えてるかわからんわで、いろんな奴に桜井は無表情で無愛想と言いふらした覚えがある。
…………やっぱ俺のせいやんな…。
あいつもわかりにくいけど、ちゃんと感情があったわけで。
それなのに、あいつのことわかろうともせんで、おかしな形容詞つけて、よく考えたら俺最悪やっちゅー話や…。
とにかくこれからは、桜井のこと少しでも理解するために頑張ろうと思う。
償いじゃないけど、大切な部活仲間やし。
で、二つ目は桜井の悩みが意外と可愛らしいものやったこと。普段怖いやらでかいやら何言われても平然としとったのに、跡部に足手まといって言われただけで泣いとるんやで。女の子やん。
ま、桜井にとったら重要な悩みなんやし、しっかり跡部から守ってやらんとな!
「…謙也、鬱陶しいんだけど…」
翌朝、朝練が終わり食堂で朝飯食ってる今。俺は片時も桜井から離れんようにしよう思って、ずーっと桜井の隣にいた。
もう片側にはピッタリと千歳がくっついている。千歳には敵わんが、俺もそこそこ背は高い方やから、しっかり守れてるはずや!
「大丈夫やで桜井、俺にまかしとき!」
「これなら絶対跡部にも見つからんばい!」
桜井は暑苦しいと言ってスルリと俺と千歳の間を抜けていく。中々素早いな!逃がさへんで!
「ちょっとついてこないでよ」
「スピードで俺に勝とうなんて100年早いで!」
「誰も競ってないから」
隣で白石が席つきやとか言っていたが、俺と桜井はぎゃーぎゃーと口論(まあほとんど俺が一方的に話してるだけ)は続き……
「おめーらうるせえよ」
後ろから、冷たく言い放った人物
跡部やった
「しもた、跡部……」
「おいマネージャー。朝からうるせえよ。俺様の朝食を乱すんじゃねえ」
「目障りだ」
そう言うと跡部は樺地を率いてさっさと食堂を出て行ってしまった。
「なんやあれ…感じ悪いな」
「ほんまやねえ、優奈ちゃん気にせんときや」
しかし、桜井を見ると思いっきり落ち込んどる。なんていうか、子供が親に怒られたときのような表情や。
あ…ほんまにこいつ、こんな顔もするんや…。
なんて感傷に浸ってる場合やない。
とにかく俺はこの合宿で桜井を守りきるんや!!!
「いや、テニスしろや」抜群のタイミングでユウジが俺に突っ込んだ。ほんまやな。