主人公視点
その後就寝時間までは四天宝寺の部屋でトランプ大会が行われた。私も部屋へ戻ると桜乃ちゃんと朋香ちゃんが恋愛トークを繰り広げていたので、トランプ大会に参加することにした。恋愛とか、私はよくわからない。私の方が年上なのに、あの子たちのほうがよっぽど女だと思った。
四天宝寺の部屋へ向かう途中、私はまるで迷子になったかのような気分になった。それほどにこの合宿所は広い。広すぎる…四天宝寺の部屋どこだっけ…とうろうろしていると、前から誰かやってくる。あの人に聞いてみよう…と近づくと。
向こうからやってきたのは、跡部君だった。しまった、と思った途端、何故か心臓の動きが早くなった。あいにく一本の廊下の真ん中だったので、逃げ道がない。
「…お疲れ様です…」
平静を装いながら軽く挨拶し、とにかくここから立ち去ろうと思ったが、そうはいかなかった。
「…こんな時間にどこ行くんだよ」
「え…あ、四天宝寺の部屋に…。トランプに誘われて…。」
ぎこちなく返事を返すと、跡部君の眉間のシワが一本増えたのが分かった。え…私何か変なこと言った…?
「ま、何するのは構わねえが、くれぐれも明日寝坊すんなよ。これ以上足手まといになられちゃ困るからな」
「…っ。…お疲れ様でした」
まただ、胸にズシンとくる感じ。やっと忘れかけていたのに、最悪な気分で四天宝寺の部屋へ向かった。